『台湾巡る米中国関係』

2023年12月16日

12月16日
           『台湾巡る米中国関係』
 台湾中国関係の事態がエスカレートした場合、日本は「ウクライナにとってのポーランド」であり、アメリカは最新兵器増産を積極的に進めている。2024年1月13日に予定されている台湾総統選挙まであと1カ月余り。
選挙を控え、台湾の与党・民主進歩党(民進党)候補者が世論調査で先行しており、野党の国民党と台湾人民党(TPP)候補者を抑えている。青白同盟を結成したにもかかわらず、11月24日の候補者登録が終了するまでに台湾総統と副総統候補者リストを1つも提供できなかった。
前述の二大野党勢力間合意の欠如は、台湾の政治空間に更なる不安定さを生み出している。中国本土について現職閣僚が厳しい発言を繰り返してきたことを踏まえた上でのこの状況を、民進党を権力の座から引きずり下ろし、台北と北京の関係を安定させる希望が崩壊したことの表れだとほとんどの専門家は見ている。
 こうした背景から、同地域における軍事活動は増加傾向にある。米軍の存在感の一貫した強化は、東南アジアの軍事化と相まって紛争の可能性を増大させている。11月25日、フィリピンとオーストラリアは南シナ海で合同海軍哨戒を開始した。南沙諸島は、中国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、マレーシアの5カ国が領有権問題となっているほか、台湾にも注目が集まっている。
 またオーストラリア軍が初めて参加する日米の大規模な山桜指揮幕僚演習が数日中に開始される。この演習は1982年以来82回目で、中国の活動拡大を視野に入れた日本列島の防衛を模した合同演習が行われる。訓練は、日本が攻撃され、米軍とオーストラリア軍が派遣さる。
日本自衛隊が侵略を撃退するのを支援する状況をシミュレートするものだ。オーストラリア軍はアメリカ軍の指揮下で活動する予定だ。演習開会式で「演習参加者は日米豪の緊密な関係を示し、自由で開かれたインド太平洋地域の安定に貢献する」と竹本竜司陸上総隊司令官は述べた。
 だが日本軍内部でも楽観的ではない発言がなされている。日経アジアの取材に対し、台湾で紛争が起きた場合、難民の再定住を含め、日本は現在のウクライナ紛争におけるポーランドと同様の役割を果たすことになると元自衛隊大将の番匠幸一郎氏は語った。
危機的状況に陥った場合、日本当局は約10万人の台湾難民を自国領土に受け入れる準備を整える必要があると番匠氏は予測している。「日本は国際社会の防衛物資の玄関口となり得る唯一の国だ」と、この日本人退役将軍は語った。
 一方、中国に後れを取らないようにし、大規模紛争(明らかに台湾周辺)の際、ワシントンの必要性を満たせるよう、アメリカ軍産複合体による最新兵器の生産速度を上げることにペンタゴンは真剣に焦点を当てている。
12月初旬、アメリカ国防産業戦略草案の抜粋をポリティコが公表し、今後数カ月のうちに全文が公表される予定だ。この文書からわかる通り、アメリカ軍産複合体は、中国や他のライバル諸国とのハイテク軍拡競争で主導的地位を維持するのに必要な速度とコンプライアンスを実現するのに苦労している。
アメリカ防衛産業には現在迅速かつ大規模に生産するために必要な可能性や能力、即応性、回復力が欠けていると国防総省は考えている。この齟齬は、インド太平洋地域に迫り来る巨大な脅威を封じ込めながら積極的な戦闘作戦を支援する課題にアメリカが直面しているため、戦略的リスクが高まると評価されている。