9月6日
『日本は将来脱ドルへ?
なぜ日本は将来の脱ドル化に向けて動いているのかASEAN諸国における地域通貨推進について専門家の意見
岸田首相は今週、ASEAN会議に出席する。ASEAN加盟国は、現地通貨取引(LCT:Local Currency Transaction)を促進するための作業部会を立ち上げた。この協定の先駆けとなった3か国に加え、ASEANの他のパートナー国3か国(中国、韓国、日本)もこのグループに加わった。
スプートニクは専門家に、LCTを通じたASEAN域内の脱ドル化の見通しと、参加国の中で最も米国に近い同盟国である日本が、なぜ脱ドル化の未来のために今動き出しているのかについて質問した。
単に見通しではなく、現実的な話?
ロシアの経済専門誌「エクスペルト」の金融アナリスト、アンナ・コロリョーワ氏は、「脱ドル」はもはや可能性の話ではなく、遠い将来ではあるが現実の話だと考えている。
「2023年7月現在、アジアの現地通貨による取引額は30億7000万ドルに達しているが、これは世界的に見ればわずかな額である。
しかし、新しい通貨はまだ黎明期にあり、発展の可能性はかなり高い。結局のところ、ASEAN諸国の発言から判断すると、彼らは脱ドル化の道を歩む決意を固めている。特に、ASEANにはかなり『強い
』アジア諸国が含まれており、中国、韓国、日本は(LCTの枠組みの中で)新しい通貨を作る、というフォーマットに加わっている」
日本にとってドルよりも大事なものは?
コロリョーワ氏は、それを説明するためには、日本を含むアジア諸国が共通して持っているいくつかの理由があると話す。「ASEAN諸国は現在、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の発展を注視しており、BRICS加盟国は現在、積極的に関係を強化し、独自の通貨を作ろうとしている。
ASEANは遅れを取るつもりはなく、代替的な、一種のカウンターバランスを作りたいと考えている。中国は、ASEANとBRICSという『複数の椅子に同時に座る』ことを望んでいる。中国は手が届くところならどこにでも投資しているため、中国はこれに関心を持っている。
アフリカ、ヨーロッパ、そして特にアジア地域における経済的地位を強化したいだけなのだ。そして、共通通貨はASEANを束ねる要素となり、ASEANの『経済的セメント』となるだろう」ト特に、アジアの多くの通貨は事実上独立しておらず、すべてドルを基軸としている、とコロリョーワ氏は付け加える。
「人民元はアジアで最も強い通貨になろうと努力しているが、円と比べるとまだ弱い立場にある。しかし、円はドル志向が強いので、ドルのわずかな変動にも影響を受ける。アジア諸国は基本的に、資本流入のために金利をもてあそぶFRB(米連邦準備制度理事会)の政策を好んでいない。
アジア諸国は、ドルに対抗できるような強い通貨で、自国の対抗軸を作ることに関心がある。したがって、日本も(米国と戦略的協力関係にあるにもかかわらず)このことに関心を持っている。アジアのメンタリティは、何よりも自国の国益を尊重しつつ、現状を維持しようとする。
したがって、日本にとってドルは友人であるが、世界におけるドルの地位よりも自国の輸出の方が重要なのである」
「新しい通貨は、よりシンプルなレジームで相互の貿易を可能にし、いくつかの矛盾点を平らにするのに役立つだろう。これはアジア諸国にとって非常に重要なことだ。つまり、新通貨の登場はドルに対する攻撃的な動きではなく、アジア内部の利益を守るためのものに過ぎない」
そして、この点をどの国もよくわかっている、とコロリョーワ氏は指摘する。
「ドルはあまりにも長い時間を使い、現在の地位を獲得してきたため、その特権的地位をそう簡単に手放すことはないだろう。ドルは長期にわたり、誰にとっても都合のいい通貨だった。
しかし、ドルはアメリカ当局に大きく依存した通貨であり、独立した決済手段ではないし、他の通貨にとっての基準にはなりえない。そして今、世界の政治・金融情勢を見ると、多くの国が、米国と何らかの不和が生じた場合にロシアのようにドル主導の決済システムから排除されるのではないかと、今後起こり得る問題について考えている」