『シーモア・ハーシュ:ノード・ストリーム爆破は米海軍特殊部隊が実行』

2023年2月 9日

2月9日

 ロシアからドイツへ天然ガスを運ぶために建設されたパイプライン、「ノード・ストリーム(NS1)とノード・ストリーム2NS2)が爆破されたのは昨年926日日のことだった。この工作を実行したのはアメリカ海軍の特殊部隊だとする記事を調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは発表した

 彼が副大統領を務めたバラク・オバマ政権の政策を引き継いだとも言える。バイデン大統領はその年の後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成した。その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加、12月にはどのような工作を実行するか話し合っているという。2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。

 その年の127日にビクトリア・ヌランド国務次官は、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2を止めると発言、27日にはバイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束した。爆破計画の拠点として選ばれたのはノルウェー。イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長の母国だ。ハーシュによると、3月にはサリバンのチームに属すメンバーがノルウェーの情報機関に接触、爆弾を仕掛けるために最適な場所を聞き、ボルンホルム島の近くに決まった。

プラスチック爆弾のC4が使われたが、仕掛けるためにはロシアを欺くためにカムフラージュが必要。そこで利用されたのがNATO軍の軍事演習「BALTOPS22だ。その際にボーンホルム島の近くで無人の機雷処理用の潜航艇を使った訓練が行われた。

そのアラームが鳴った1分後、イギリスの首相だったリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送っている。この情報は1030日に報じられたが、その前日、ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だと発表、トラスはその4日前に辞任している。

1018日にあった。イギリスのベン・ウォレス国防相がアメリカを秘密裏に訪問したのだ。アメリカでは国務省や情報機関の高官のほか、ロイド・オースチン国防長官やマーク・ミリー統合参謀本部議長と会談、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官と会ったというが、その際、なぜ電話でなく直接会いに行ったのかが話題になったのである。

アメリカ海軍、イギリス海軍、そしてノルウェーの合同作戦ということも考えられるだろう。ポーランドもロシアからEUへの天然ガス輸送を妨害している。それを回避するためのノード・ストリームだった。

 それにもかかわらず、ドイツの首相だったアンゲラ・メルケルやフランス大統領だったフランソワ・オランドは2014年から8年間、ウクライナの戦力増強に協力している。ふたりともミンスク合意はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語っているのだ。

 アメリカの時代は終わったと判断したのか、友好国だったはずのサウジアラビアやトルコもロシアへ接近、イスラエルのナフタリ・ベネット前首相はウクライナでの停戦交渉をアメリカ/NATOが壊したことを明らかにした