『トルコの立位置米露欧』

2022年6月 4日

6月5日 

 NATOの内部分裂は、新しい現象ではなく、トルコのモスクワとの結びつきと、アメリカやNATOの他の国々との緊張が、その主な表れだ。スウェーデンとフィンランドという北欧二カ国を加えててのNATO拡大に対する最近のトルコの反対は、またしても、この組織が内的に統合された家からは、ほど遠いことを明らかにする。

トルコの反対は、ロシアとのつながりと無関係だ。実際、ロシアのウラジーミル・プーチンは、この二国が加われば、予想すべき論理的措置に過ぎないロシアの対抗策をとると強調したが、両国のNATO加入の重要性を実際軽視した。

 アンカラは、近年、複数回NATO拡大を支持している。疑問は下記だ。アンカラはなぜ今反対しているのか?トルコの反対は、NATO拡大支持と引き換えに、欧米の保証を望む若干の政治的利益に結びついている。結果的に、アンカラは国益に従って、合意を基本とするNATOモデルを、自身の利益のため利用しているのだ。

 何よりも、トルコは欧米がクルド人に対する政策を変えることを望んでいる。スウェーデンとフィンランドに対するトルコの異議申し出の根本的に重要な理由は、両国が何年も守っている特定クルド指導者に対する支持だ。516日、スウェーデンとフィンランド両国がPKKとギュレン主義集団に関係する19人の人々を引き渡すトルコの要請を拒絶した。

 トルコの異議の一部はアメリカの譲歩を引き出す、特にF-35戦闘機計画にトルコを含ませるアンカラの狙いだ。S-400ミサイル防衛システムを購入するロシアとアンカラの取り引き後、アメリカはアンカラをF-35プログラムから追放した。その時以来、アンカラは常時、外交上、このプロジェクトにアンカラを含めるようアメリカを説得するため、できる限りのことをしてきた。

トルコは中核的国益に役立つ形で、この危機を利用しようとしているのだ。 アンカラをF-35プロジェクトから追放するのに加え、アメリカはトルコ防衛産業に制裁を課した。これら制裁は、ロシア軍需産業が拡大し、アメリカ/NATOに挑戦するのを阻止するため制定された2017年の法律「敵対者に対する制裁措置法」(CAATSA)の下で課された。

 トルコの反対は、スウェーデンとフィンランド両国に対するアメリカの支持と真っ向から対立する。519日、ジョー・バイデンは、ホワイトハウスで、スウェーデン、フィンランド両国指導者を歓迎し「アメリカが全面的、全体的、完全な支持」を申し出た。 

 この問題に平和的解決を見いだすため、複数回ロシアとウクライナ当局者間会談を主催した。先月トルコ外務大臣が「一部NATO加盟諸国はウクライナ戦争が終わることを望まない」と、ずばり言った

NATOでのトルコの重要性と役割は、F-35プログラムからの追放とアメリカ制裁以降、非常にわずかなものだった。この組織の他の国々に、鍵となる地政学当事者として同盟内での重要性を認めるよう強いるべく、自己主張しているのだ。

 エルドアンにとっては、次の選挙に勝つため、欧米から譲歩を引き出すこと、特にアメリカに制裁解除させることが重要だ。親エルドアン・メディアから既製の支持が得られるので、政権は欧米から多少の譲歩を引き出せば「欧米を屈服させる」アンカラ能力の成功を見せつけることができる。トルコでは、既にエルドアンは、欧米を直視することができる「絶対的指導者」として描写されている。

 アンカラには、NATO内で切り札を使う複数の理由があるのだ。欧米主流メディアの習慣的な単純化され過ぎた「ロシアの男」としてのエルドアン描写と違って、アンカラの反対によって起こされたNATO拡大の進行中の問題は、この同盟内におけるトルコ自身の疎外感に結びついている事実は依然変わらない。