アメリカの支配層が世界制覇戦争を本格化させたのは1991年12月にソ連が消滅した直後からだが、ウクライナでの戦争に限定すると2013年11月の下旬。その直前、ウクライナの国会議員だったオレグ・ツァロフは11月20日、議会でクーデター計画が存在すると警鐘を鳴らしていた。
実際、バラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターを実施、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領は2014年2月22日に排除された。クーデター直後に治安機関のSBU(ウクライナ保安庁)をアメリカのCIAは素早く指揮下に置くが、軍や治安機関から反クーデター軍へ合流した人は少なくなかったと言われている。
オバマ政権はクーデターでネオ・ナチを使ったが、その主力は右派セクター。2013年11月にドミトロ・ヤロシュとアンドリー・ビレツキーが創設した団体だ。ウクライナのテルノポリでは2007年5月に欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議が開かれたが、その議長を務めたヤロシュはすでにNATOの秘密部隊ネットワークに参加していた。その当時、アメリカのNATO大使を務めていたのがビクトリア・ヌランドだ。
クリミアでは3月16日にはロシアへの加盟を問う住民投票が実施された。80%を超える住民が投票に参加、95%以上が加盟に賛成している。そしてクーデター政権が送り込んだ戦車部隊と戦闘が始まる。
この戦闘はドンバス軍が優勢で、オバマ政権はテコ入れのためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだほか、傭兵会社「アカデミー(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名をウクライナ東部の制圧作戦に参加させたとも伝えられた。CIAは2015年からウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練しているという。
ウクライナのクーデター政権は正規軍を信頼していない。ロシア軍と戦っている主体は内務省の親衛隊だが、その中心はアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)であり、その母体は右派セクター。つまりロシア軍と戦っている主力はNATOの秘密部隊だ。
昨年11月2日、ボロディミル・ゼレンスキー大統領はヤロシュをウクライナ軍のバレリー・ザルジニー最高司令官の顧問に据えた。ロシア軍との戦争をこの段階でゼレンスキー政権、つまりジョー・バイデン政権は想定していると言えるだろう。
バイデン政権は昨年11月25日より少し前、ロシアに対する経済戦争も計画している。アメリカの影響下にあるロシアの金や外貨を凍結、エネルギー資源をはじめとする貿易を制限し、SWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除も決めた。
内容を決めたメンバーにはジャネット・イエレン財務長官や情報機関や軍の人間が含まれ、財務省のウォーリー・アデイェモ副長官、エリザベス・ローゼンバーグ次官補、そして国家安全保障副補佐官のダリープ・シンが関係したという。
バイデン政権はドンバスやクリミアに対する軍事作戦でロシア語系住民を殺戮、配下の有力メディアを利用して責任をロシア軍に押し付けるつもりだったのだろうが、その前、2月24日にロシア軍がウクライナに対する攻撃を開始した。ロシア軍はウクライナ/アメリカ側の機密文書を回収することに成功している。
ロシア軍の核生物化学防護部隊を率いているイゴール・キリロフ中将は3月7日に記者会見を開き、ウクライナの生物兵器の研究開発施設から回収した文書について語っている。
ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていたとしている。3月8日には上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官はウクライナの施設で研究されている生物化学兵器について質問され、ロシア軍に押収されるかもしれないと懸念している。
つまり、ウクライナの研究施設で生物化学兵器の研究開発が行われていたことを否定しなかった。アメリカの生物兵器研究開発施設には、アメリカ国防総省や同省の国防総省のDTRA(国防脅威削減局)が協力、そのほか国務省、USAID(米国国際開発庁)、USAMRIID(米国陸軍伝染病医学研究所)、WRAIR(ウォルター・リード陸軍研究所)、そしてアメリカの民主党が仕事を請け負っている。
ロシア軍がウクライナの軍事施設や生物兵器の研究開発施設を攻撃した直後、バイデン政権を崩壊させるだけでは済まない大スキャンダルが発覚しているのだ。ウクライナで停戦が実現した場合、このスキャンダルが噴出する可能性がある。つまり、バイデン政権は戦闘をやめさせるわけにはいかないだろう。