『ロシアのミサイルが西側に脅威』

2022年3月20日

  ロシア軍は318日、超音速(マッハ10)ミサイル「Kh-47M2キンジャール」でウクライナ西部にあるデリャテンの地下武器庫を、また沿岸防衛システムの「K-300Pバスチオン-P」でオデッサ地域の無線監視センターをそれぞれ破壊したという。バスチオンの主要な役割は艦船に対する攻撃だ。

 313日にロシア軍は8機の巡航ミサイル「カリブル」を使い、ポーランドとの国境から約25キロメートルの場所にあるヤボリウ基地を攻撃した。キンジャールと同様、約1000キロメートルを飛行、ターゲットを正確に捉えている。

 いずれのミサイルも実際に軍事施設を破壊しているが、それだけでなく、ロシアが保有する最新鋭兵器の性能をデモンストレーションしているのだろう。

 ウラジミル・プーチン露大統領は201831日の連邦議会における演説で、ロシアやその友好国に対する攻撃には反撃すると宣言、同時に保有する最新兵器を明らかにした。これはアメリカが2002年にABM(弾道弾迎撃ミサイル)条約から一方的に脱退したことに対するロシアの回答だとしている。

 中でもネオコンは1991年の湾岸戦争以来、ソ連/ロシアはアメリカが軍事侵攻しても出てこないと考えるようになっていた。

 2015930日、シリア政府の要請でロシア軍が介入し、アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールなどを後ろ盾とするジハード傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(ISISISISIL、イスラム国などとも表記)を敗走させた。

 そして107日、カスピ海にいたロシアのコルベット艦から発射された26機のカリブルは約1500キロメートルを飛行し、シリアのターゲット11カ所を正確に攻撃、破壊している。この性能にアメリカ側はショックを受けたと言われている。キンジャールにしろ、バスチオンにしろ、使った目的は同じだろう。単に軍事目標を破壊しただけではない。アメリカに従属するヨーロッパ諸国だけでなく、アメリカもロシアを攻撃したなら確実に報復され、破壊されるということだ。

 スタンリー・キューブリックが監督した映画「博士の異常な愛情」ではアメリカ軍の先制核攻撃に対し、ロシア軍の「ドゥームズデイ・マシーン」が起動して地球は破壊され、放射性物質で汚染されることになる。本来、「ドゥームズデイ・マシーン」は抑止力として考えられたのだが、発表前に核攻撃があり、人類を破滅させることになる。それに対し、プーチンは事前にロシアが保有する最新兵器を明らかにしたわけだ。