先日、日本在住の元トルコの財閥A氏から、トルコ経済の実情を聞く機会があった。その前に美味しいトルコ料理を、ご馳走になったのは幸運だった。羊の骨付き肉とアバラ肉を煮込んだ料理にスープ、そして混ぜご飯だった。それを全部ご自身で料理してくれたのだから、まさに感動ものだった。
同じ料理を他のトルコ人の友人が、何度か食べさせてくれたのだが、A氏の方が数段美味かった。それは彼が美味しい店で何度も食べていたから、出来た芸当なのであろう。まずは感謝だ。
彼は食事が済んで話し始めてくれたのだが、要点は次のようなものだった。トルコの中央銀行は自由ではなく、常にエルドアン大統領の介入と命令を受けている。そのため中央銀行は自身が考える経済政策は、取れないということだ。しかも、中央銀行の総裁は過去4年で、4人が交代しているということだった。
エルドアン大統領は自身が経済を学んだと言っているが、どうもそうは思えない。彼が卒業したと主張するマルマラ大学には、彼が学んだ痕跡は何処にも無い。彼に言わせると利子を下げることによって、企業は活性化するというのだ。しかし、彼がそうする度に、トルコリラの価値も下がっているのが実情だ。
トルコリラの価値は米議会の決定を、モロに受けているのだ。野党クルド党のHDP党首デミルタシュの長期間にわたる収監や、経済人カバラ氏の拘束も、決してアメリカが歓迎していないことだ。
最高裁判所のトップも、エルドアン大頭領の意向通りに決めている。しかも2016年に起こったクーデターも、エルドアン大統領によるものだった、と彼は言っていた。それは私も何度となく、この欄で主張してきたことだ。
そして最近の出来事では、1280億ドルはどこに行ったのか、という国民の不満だ。その行方は国民がよく知っているのに、エルドアン大頭領は隠し通しており、秘密を明かす気はない。エルドアン大統領はこのカネでスワップを進め、巨額の利益を得ているのだ。
この結果ドルは値上がりし、トルコリラは下がることになり、国民がそれをかぶるという構図だ。それを修正するために、エルドアン大頭領はカタールに出かけ、金を借り入れているのだ。カタールにはサウジアラビアとの対立の中で、トルコの軍事力をあてにしたことで、こうした関係が成り立っているのだ。
これだけではなく、カタールはエルドアン大統領に、13機のジャンボ旅客機もプレゼントしている。国民はそれを現金でトルコに寄付して欲しいと願っている。
大学卒の若者は仕事がない失業状態にあり、農民は農産物が輸出出来ないで苦しんでいる。そのため薬が買えず庶民の健康状態に保証はない。まさに地獄絵図であろう。
この日、トルコのテレビ番組を見ていたが、そこには野党第一党のCHPが開催して、抗議集会が流れていた。農民は物が売れないと嘆き、若い女性は大学を出たが、仕事にありつけないと訴えていた。まさに彼の説明通りだった。
デモはメルシン市でのものだったが、何万人も集まっていたようだ。他の町でも同様のデモが行なわれている。庶民のエルドアン離れは、確実に進んでいるということだ。