『トルコのシリア攻撃は起こるのか』

2021年11月26日

 シリアのカミシリ地域でシリア軍による、アメリカ軍に対する攻撃が、始まっているというニュースが流れた。ちょっと信じ難いのだが、何らかの武力衝突が起こっていることは確かであろう。

 シリアは以前からアメリカ軍がシリア国内に、勝手に駐留していることに、腹を立てているし、そのアメリカ軍がシリアの石油や小麦を、強奪していることにも、腹を立てている。言ってみれば当然のリアクション、と言うことであろう。

 しかし、シリア軍の軍事力とアメリカ軍のそれでは、比較にならないだろう。ただいまシリアがアメリカ軍に対して、軍事行動を起こせるのには、二つの理由がある。アメリカ軍の駐留規模はそれほど大きくないことと、クルドミリシア頼りだということ。加えて、シリアにはロシア軍が味方しているということだ。

 アメリカはミリシアを使うことによって直接的な、シリア軍との本格的衝突は逃れたいであろう。そうなるとアメリカに期待されるの、トルコ軍の存在だ。トルコ軍はエルドアン大統領が決めれば、シリアに進軍するだろう。

 しかもトルコはシリアの領土の一部を奪いたい、とも以前から考えてきているのだ。だがそうは言っても、今のシリア軍が強大になっていることに加え、以前トルコ軍機がロシア機を撃墜させたこともあり、ロシアがどう出てくるか分からない。

トルコとロシアとの関係はS400の取引以来、大分改善していると言われているが、必ずしもそうではあるまい。ロシアが地中海沿岸に唯一軍港を持つ、シリアを守ることは絶対に曲げられないだろう。

そう考えてみると簡単な結論を出すならば、シリア・アメリカ軍の衝突は拡大しない。トルコ軍は形だけのシリア侵攻を行なうとしても、アメリカの意向に沿ってシリアを叩くことはない、ということではないのか。もしそれを破るようであれば、黒海と合わせアメカとロシアの軍事緊張は、高まるということであろう。