イランのIRGC(革命防衛隊)はハメネイ最高権威の支援の下、イラン国軍をしのぐ軍事力に変貌している。スレイマーニ将軍と言う英雄を生み出し、彼はシリアやイラクなどでのIRGCの活動範囲を広げ、イランのイラク・シリアに対する政治的な影響力を強めることに成功していた。
しかし、スレイマーニ将軍が暗殺されて以来、IRGCの人気は低下したが、それはIRGCがもう正義の味方ではなく、イランの強硬派の考えをイラクやシリアに押し付ける存在に、変貌したためであろう。
シリアではIRGCがシリア国内で勝手に軍事基地を構築し、イスラエルに対する挑戦的な言動を、繰り返すようになった。その地域はシリアの首都ダマスカスに加え、最もデリケートなゴラン高原のそばにも設置されたのだ。
その事を口実に、イスラエル側は自国の安全が脅かされるとして、何度もダマスカス周辺などの空爆を、繰り返すようになっている。このためシリア政府は、IRGCに対して行動を抑えるように言うのだが、全く聞き入れていない。
こうした状況が続けば、再悪の場合はシリア軍とIRGCが武力衝突するかもしれないし、シリアはそこまで行かないにしても、IRGCの自国内での行動を規制するために、IRGCの駐留軍人を削減するか、全面撤退をイラン政府に要求するだろう。
イラクの場合も同じだ。イラクの場合はIRGCが駐留しており、彼らは子飼いのミリシアを使って、軍事行動を起こしている。外国の大使館やイラク政府要人の居住するグリ-ン・ゾーンに、ミサイルを発射したり、砲弾を撃ち込んでいるのだ。
これは駐留米軍も危険にさらされるわけであり、イラク国民からはアメリカ軍帰れのデモが繰り返されるようになった。結果的には、アメリカとイラクの交渉の末、アメリカ軍は今年12月の末には、イラクから全面撤退する事になっている。
その事はイラク国内の治安上、また諸外国のテロ活動防止上も、極めて危険な情況を生み出す事になる。こうしたことからイラク政府もイランに対して、IRGC兵員の削減を要求することになろう。
シリアの場合もイラクの場合も問題は、IRGCが軍事支援だけではなく、軍事力を行使して、両国に圧力を掛けているということだ。加えて両国の内政に、大きく関与しているからということだ。やりすぎはIRGCをペルソナノングラータにしたようだ。その事は今後、地域の軍事バランスを大きく変える事になろう。