エルドアン大統領はアメリカ軍が撤退した後の、アフガニスタンの治安を守ると言い出している。もちろん、これはアメリカを喜ばすことであろうが、果たして安全な仕事であろうか。
単純に考えて、タリバンは極めて危険な組織であるということに加え、アフガニスタンは阿片やハシシといった、麻薬がはびこっており、トルコの兵士もそれに手を出す危険があろう。また、今後トルコがアフガンの麻薬の秘密の取引に、関与していくことも考えられよう。
他方、トルコがアフガニスタンにコロナを持ち込み、大流行させるのではないか、という懸念も出てこよう。そうなりアフガニスタン人の間に、犠牲者が増えていけば、トルコに対する憎しみはつのろう。
エルドアン大統領の考えでは、トルコ人もタリバンもイスラム教の信者であり、双方に考え信条に違いはないから、問題は解決できるというものだ。しかし、宗教だけではなく利害が絡んでくると、ことはそう簡単ではあるまい。
もう一つの問題は、誰がトルコ軍の派兵費用を、負担するかということだ。アメリカがトルコ兵を傭兵として雇えば、経費の一部を負担するだろうが、その額はエルドアン大統領を満足させるだけの、金額になるのであろうか。
アメリカはアフガニスタンからアメリカ兵を撤退させた後も、傭兵やCIA要員などを常駐させる考えであり、経費もかさんで来よう。アメリカは今後、アフガニスタン政府を支援するのか、タリバンを支援するのかでも、アメリカとトルコとの間には問題が、起ってくる可能性もあろう。
トルコは当面の危険分子はタリバンと考えており、今後、アフガニスタンを支配するのはタリバンだと考えているようだ。その考えは正しいと思われるのだが、それでトルコがタリバンとの接触を増やしていけば、アメリカと真っ向から、将来には衝突することも、考えられよう。
アフガニスタンは地理的に微妙な位置にあり、中国との関係もあればロシアとの関係もあろう。そうなるとトルコはアメリカ、ロシア、中国を見ながら、アフガニスタンへの関与を、進めていかなければならなくなるということだ。
今のところアメリカが期待する、トルコのアフガニスタンでの役割は、カブール空港の安全維持ということのようだが、それだけでは済むまい。トルコのエルドアン大統領はかつてロシアやイギリス、そして今はアメリカが失敗した、アフガニスタン対応で成功できるのだろうか。
もし、トルコがアフガニスタンを手玉に取ることに成功すれば、エルドアン大統領が夢見るトルコ大帝国は現実のものとなるかも知れない。