アメリカにとって最も重要で、関係のいいアラブの国は、サウジアラビアであろう。その良好な関係は、長い間続いてきている。しかし、最近はどうもそれが変化しているのではないか、と思えてならない。
アメリカにとって最も嫌うべき、イランはといえば、最近のイラン・アメリカ関係は見えない赤い糸が、ちらほらするように思える。そもそも、アメリカにとって中東の橋頭堡であったサダム体制が、打倒された後は、イランが一番深くイラクにコミットし、影響力を拡大しているのではないのか。
サダム後のイラクの政権を牛耳っているのは、シーア派の人士であり、イランのイラクに対する政治的影響力は、日に日に増している。イラク国内では親イラン派のミリシアが力を増し、彼らのイラク政府に与える影響力が、拡大している。
宗教界からもイラク政府に対する、サドル師とそのグループや、シスターニ師とそのグループの影響力は、拡大している。彼ら二人の発言はイラク政治を動かしているのだ。
他方、アメリカとサウジアラビアとの関係といえば、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と、アメリカ政府の関係は劣悪であり、アメリカ政府は彼を相手にせず、直接サルマン国王と連絡を取り合っている。
加えて、アメリカはイエメン問題では、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が進めてきたイエメン打倒作戦を無視し、敵であるホウシ・グループを、テロのリストから外してもいる。これはまさに真逆の立ち位地であろう。
結果的に、イランはこのホウシ・グループに対して、おおっぴらに武器を送り、ホウシ・グループはその武器を使って、サウジアラビアの石油施設や、軍事基地を攻撃している。この際、アメリカが売りつけた対空ミサイルシステムは、あまり役に立っていないようだ。
このままの流れでいけば、サウジアラビアにもイランの影響力が、拡大していくものと思われる。既にムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、イランとの関係改善を打診し始めてもいる。その仲介を果たしたのは、アメリカが創り上げたイラクの、シーア派権力なのだ。
アメリカは近い将来、イランにパーレビ体制を復活させる気なのだろうか。あるいはイランの現体制を、穏健化していくつもりなのだろうか。真相は分からない。