『トルコとアメリカ・ロシアとの駆け引き』

2021年5月 6日

『トルコとアメリカ・ロシアとの駆け引き』

 ある外国の報道に次のようなものがあった。先進的なS-400ロシア防空システムをトルコが購入するのを阻止し損ねた後、ここ数カ月、ワシントン外交は、ウクライナ、アフガニスタンやリビアからアルメニアまで、いくつかの重要な国々におけるアメリカの権益を支持するよう、トルコのエルドアン大統領の「姿勢を変える」のに、まんまと成功したように思われる。

リラ急落で、トルコ経済は大惨事の瀬戸際で、ワシントンの身勝手な戦略家が、手練手管のエルドアン大頭領を、命取りの熊のわなに誘い込んだように益々見えてくる。しかし、エルドアン大統領は全ての相手を自分に有利に動かす名人と呼ばれている。

2016年、忠誠を度々裏切るエルドアン大頭領に、ワシントンがうんざりして、彼を暗殺して、CIAが支配する亡命中のフェトフッラー・ギュレンのネットワークを、権力の座につけるためクーデターの企ての背後にいた、と彼はCIAを非難した。

201511月には、シリア領空で、トルコのジェット戦闘機がロシア戦闘機を撃墜した戦争行為に対する報復として、ロシアはロシア観光客にトルコへの厳しい旅行禁止令と、トルコの輸入食品に禁止令を課した。このロシア制裁は、トルコ経済に強烈な打撃となった。

アメリカの三大格付け会社、フィッチ、ムーディーズとSPは、全て、エルドアンの最近の敵対的な政治的動きを引き合いにして、トルコ国債を「ジャンク」級に格下げした。その結果、リラがフリーフォールし、中央銀行に利率を急激に引き上げるよう強いて、その過程で経済成長が締め殺されたのだ。

アンドリュー・ブランソンとスパイ活動のかどで告訴された、他のアメリカ国民の保釈を要求して、トルコに経済封鎖を課していた。インフレーションが進む中、トルコの鉄鋼とアルミニウム輸出は、二倍になったアメリカ関税で打撃を受けている。

だがトルコはカタールの、トルコに150億ドル投資するという公約で、問題を鎮静することに成功し、それに続く、エルドアンの北京訪問が、中国の支援で、数十億の追加支援を確保したことによって窮地から脱出できている。

ロシアに対しては、エルドアンはプーチンとロシアに間接的に反抗した。同様に、20209月「アルメニア-アゼルバイジャン戦争」発生時には、ロシアのユーラシア経済連合のメンバー、アルメニアに対する、イスラム教同盟国アゼルバイジャンに、トルコは極めて重要なドローンと軍事顧問を提供した。今回はロシアのすぐそばでの、もう一つのロシアの戦略的権益に対する間接的なトルコ攻撃だった。

 トルコは「友好的な兄弟のようなアゼルバイジャンに、全力と全身全霊で」と共にあり続けると述べた。報道によれば、プーチンは、このトルコ側の発言に喜んではいなかった。

20201月、トルコとウクライナは、ウクライナが6億ドルの巡航ミサイル・エンジンをトルコに提供する合意を含む、本格的な軍事貿易協定に署名した。ウクライナは、S-400を巡るアメリカの対トルコ制裁を回避して、トルコ軍にドローンのエンジンも提供した。最近トルコはドンバス戦士に対して使用を計画しているウクライナ軍に、バイラクタル TB2無人戦闘航空機を再販している。

 先月エルドアンが、中央銀行総裁を解雇し、党の仲間に置き換えて以来、リラ危機が再燃し、トルコは2018年より更に脆弱になっている。この時点で、ワシントンがエルドアンを熊のわなに追い込んだように思われる。

もし彼の新中央銀行総裁がリラ危機の中、経済を浮揚させるために利率を切り下げようとすれば、何百億という欧米の投資資金がトルコから逃げ出し、2023年の国政選挙前に、経済を、おそらく2018年より、もっとひどい状態に陥りかねない。

これに対抗して、戦略的に重要なNATOインジルリク空軍基地の外で抗議が始まり、トルコ人はアメリカ兵撤退を要求している。同時にトルコ軍は、戦車、歩兵戦闘車、大砲、ロケット発射装置、監視システム、ジャマーや防空システムを含む重装備武器や何千という兵隊がいる。イドリブにおける彼らの陣地を強化している。

 エルドアンのアメリカとロシアとの、狭間の中での戦いは、実に興味深い。ある時はアメリカに敵対したかと思うと、次の日にはロシアに敵対しているのだ。言ってみれば綱渡りのような芸当であろう、第三者から見ていると実に面白い光景だ。