『アメリカはサウジアラビアの体制内変革を求める?』

2021年3月21日

 アメリカ政府はサウジアラビアの現体制を変更し、他の王族を王位に付けようと、思っているのではないかと思われる。そもそもアメリカはムハンマド・ビン・サルマン皇太子の、非人道的な殺害行動に、極めて厳しい対応をしている。

 ムハンマド・ビン・サルマン皇太子を降ろして、その前の皇太子だった、ムハンマド・ビン・ナーイフ王子を復帰させたい、と思っているのではないか。

 最近のアメリカのイエメン戦争への対応は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子を追い込むものになっている。イエメンのホウシ・グループに対する制裁を取りやめた、ということは、イエメンがサウジとの戦争で勝利する方向に、向かわせているのであろう。

 こうなると、イランから多数のドローンを始めとした、武器を受け取っているイエメンは、サウジアライアの石油施設を破壊し、サウジアラビアは経済的にも、大きなダメージを受けることになる。

 金の力で国民を黙らせていた、ムハンマド・ビン・サルマンの皇太子の政策は、続かなくなるということだ。そして彼は皇太子の座から、降りざるを得なくなろう。もし、サルマン国王がどうしても、彼を擁護するというのであれば、サルマン国王の地位も、危険なものとなろう。

 アメリカは既にサルマン国王に対して、ムハンマド・ビン・ナーイフ王子を皇太子に、復帰させるべきだと言っているらしい。もしそうならなければ、アメリカはサウジアラビアの王室内クーデターを、画策するかもしれない。

 時代は完全に変わり、トランプ大統領の時のような、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子擁護の気配は、何処にも無くなっている。トランプ政権下では彼の義理息子クシュナーを経由し、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はホワイトハウスと、連絡がついていたのだが、それはもうないのだ。

 そもそもバイデン大統領は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子を嫌っており、一日も早く引き摺り下ろしたいのであろう。その証拠は幾らでもあるということのようだ。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子失脚への道は、イエメン経由ということになるのであろう。

 イエメンへはアメリカが人道支援を始めてもいる。アメリカはUSAID援助を再開したし、対外援助を実施する連邦機関、国際開発庁は、最近、アメリカ議会と、イエメンで活動するパートナー機関に、北イエメンへ資金供与を再開する、と正式通知してもいる。

 サウジアラビアが対外政策の舵を正しい方向に向けたが、国家安全保障判断に優先順位を付ける、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の能力に疑問を投じている。王国の政治エリート集団が、間もなく評価を下すだろう。問題は、不安定な地政学の時期を、王国に乗り越えさせる皇太子の能力だ。そうなると、地域でのサウジアラビアの地位をリセットし、アメリカの方針に一層しっかり足並みを揃える能力と、意志の両方を持った指導者ムハンマド・ビン・ナエフの姿が、浮かび上がってくる。