『中東短信』

2021年2月 7日

:ISが再活性化

 バグダッドの近くのファルージャは、以前、IS(ISIL)が勢力を誇示していた地域だが、アメリカ軍などによって追放されていた。だが、最近、再度IS(ISIL)は勢力を、拡大しているようだ。

 ファルージャの街は相変わらず、IS(ISIL)によって破壊されたままであり、家屋は瓦礫の山のままだ。何千人もの家族がそのために避難しており、街には戻っていない。その街に住んでいたイブラヒムは、子供とともにファルージャを訪問していたが、彼は政府はIS(ISIL)を避難するだけで、何の対策も取っていない、と語っている。

 イラク政府は最近のIS(ISIL)の再活性化について、アメリカ軍の支援が無いからだ、と語っている。アメリカ軍による空爆無しには、IS(ISIL)対応が難しいということのようだ。

 

:リビアの新閣僚人事が決まる

 リビアの暫定移行期間の会議が、ジュネーブで開催され、12月の選挙に向けて動き出している。この会議のなかでは、これまで、あまり名前が出てこなかったメンバーが、新政府の要職に就いたようだ。

 ムハンマド・ユーニス・アルマヌーファは国会議長に就任、ムーサ・アルクーニ・アブドッラーは国会副議長に、そしてアブドルハミード・アルダビーバは首相の地位に就いている。

 このなかには、西側政府GNAの首相だったセラジは、入っていないし、彼に対抗してきたアキーレも、入っていない。また東側政府LNAのハフタル将軍も、含まれていない。新政府は全く新しい政府に、なるということであろうか。

 この暫定政府については、トルコもエジプトも歓迎しているが、12月の選挙時まで継続できるのか否かは、分からない。しかし、ロシアは暫定政府歓迎に名を連ねていないが、それはしかるべき意図があるのか分からない。

 今後、これまでリビアに合大量の武器を送り込んできた、アラブ首長国連邦は何もしないのか、ハフタル将軍擁護派は動かないのか、気になるところだ。

 

;イラクでアメリカ軍撤退とサダムの脅威

 イラクからアメリカ軍が撤退する、という情報が流れるなかで、イラク国民の間ではその後の、イラクが不安定化することを、恐れAる声Aが上がっている。イラクではいま、IS(ISIL)やアルカーイダ、イラン軍など、多くの勢力が活動しており、それを抑えるにはアメリカ軍の存在が、大きな価値を持っていたのだ。

 このことに加え、イラクにはいまでもサダム・フセイン大統領の、シンパが存在しており、イラクの中北部には彼らの影響力が、いまでも強く残っているということだ。イラク政府は軍の相当部分を、イラクの中・北部に展開しいるが、IS(ISIL)の勢力も数千人規模だということだ。 

 そのイラクの中部と北部は、スンニー派の居住地域であり、サダム体制下では大きな恩恵を、受けていた地域なのだ。そのため、アメリカ軍が撤退すれば、サダム・フセイン派が再復活することは、充分にありうるということだ。

 そうなれば、結局イラクは3分割され、国内では戦闘が再復活するかもしれない。