『湾岸諸国の和解は本物か・誰の利益か』

2021年1月 7日

『湾岸諸国の和解は本物か・誰の利益か』

 イランへの対応を巡り、カタールはイランと親しい関係にあることから、アラブ湾岸諸国からボイコットされてきていた。なかでも、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の、カタール対応は厳しく、冷たいものであった。 

だが、ここに来てこの雰囲気が一挙に変わり、アラブ首長国連邦とサウジアラビアは、カタールとの正常な関係を、始めることになったようだ。それはアラブ湾岸諸国会議GCC)が、サウジアラビアのリヤドで開催されることになったためであろうが、もちろん、それ以外にも幾つもの理由があったろう。

 情報通の間では今回の和解は、アメリカの大統領がトランプからバイデンに、交替することによるのではないか、という見方がなされている。また、アラブ首長国連邦はイスラエルとの、正常な関係構築に合意し、ややもすればアラブ諸国から、非難を受ける立場にあったが、その急先鋒となりかねないカタールとの、関係改善によってそれを緩和しよう、ということかもしれない。

 サウジアラビアもムハンマ・ビン・サルマン皇太子の暴走が、サルマン国王からたしなめられ、新しい政策が必要になっていたことに、よるのではないかといわれている。いずれもそれなりにありうる話だが、真相は分からない。

 この新しいサウジアラビア・アラブ首長国連邦とカタールの関係は、実はクウエイトとオマーンが裏で動いていた、という情報もある。これは事実であろう。クウエイトとイランの関係も、オマーンとイランの関係も正常なものであり、特別な敵対関係にはなかったからだ。

 さて、この新しいアラブ湾岸諸国関係は、どの国とって利益となっているのであろうか。表面的にはエジプトもトルコも、この新展開を歓迎している。エジプトは純粋に歓迎であり、そうなればアラブ湾岸諸国全部との関係が、スムーズに進められるからであろう。

 だがトルコは少し事情が異なるのではないか。トルコとカタールとの関係は、極めて強く、リビア問題でも共闘していた、カタールの安全のために、トルコはカタール国内に軍を派兵し、軍事基地を設置してもいた。

 また、カタールはトルコの経済を支えるために、大型の投資も行なってきていたし、トルコからの輸入も増やしていた。しかし、今回の合意でカタールは、そんな外国軍の駐留は、必要なくなったのではないかと思われる、もちろん、だからと言ってすぐに出て行ってくれ、とは言い出さないだろうが、今後はトルコ軍はカタールにとって、お荷物になりかねないのだ。