2020年は中東諸国にとって、最悪の年だったのではないか。まず挙げられることは、世界最大の石油生産を誇っていた、巨満国家の代表のように賞賛されていた、サウジアラビアの経済がガタガタになったことだ。
サウジアラビア政府は経済建て直しのために、次々と手を打ったのだが、そのいずれも失敗に終り、いまでは債務国入りしているという有様だ。一説によると、日本の銀行に依頼し、借金対策を考えているとか。
それ以外の国はと言えば、経済躍進を言われていた、トルコが大きな債務を抱え、動きが取れなくなってきていることだ。外国に兵を送ることによって、利益を挙げようとしたのだろうが、そのいずれも失敗に終わり、かえって借金を増やす状態になっている。リビア、シリア、アゼルバイジャンへの派兵は、皆失敗だった。
これ以外にもレバノンは、ほとんど国家が崩壊した状態であり、貧民層はパンを得ることすら、難しくなっている。それはチュニジアやアルジェリアも、同じなのではないか。そしてエジプトも貧民層は苦しかろう。
経済情況の悪化に合わせ、コロナの蔓延がそうした状態を、生み出しているのだ。イエメンもやはり、相当経済が壊れており、餓死者も出る始末だ。しかも、サウジアラビアとの戦争が続いてもいる。地上には貧困、空からはサウジアラビアのミサイルが、飛んで来ているのだ。
こうした惨憺たる情況の、中東諸国の問題の原因は、幾つかに分けられる。戦争による貧困、コロナによる経済の崩壊と貧困、国内問題による経済の崩壊などだ。トルコはエルドアン大統領の独裁とコロナ、レバノンは国内混乱とコロナ、マグレブ諸国はコロナと国内混乱であろう。
エジプトは何とか持ちこたえているが、これも何時破綻するか、分からない状態にある。スーダンは実質的に分裂したが、それでも内部問題は残っている。情況の改善にイスラエルとの関係を開いたが、どの程度の経済効果があるか分からない。
パレスチナはイスラルの外交勝利により、完全にアラブから相手にされなくなっている。それはマハムード・アッバース議長を始めとする、パレスチナ自治政府幹部の、汚職がはっきり見えるように、なったからであろう。
だが、腫れ物の膿が出るように、中東諸国は2020年の大混乱と塗炭の苦しみから、2021年は少し解放されるかもしれない。イエメンではホウシ派と政府側が、妥協を始めているし、レバノンでも然りだ。
最近、よくアラブの春は何処へ行ったのか、何を生み出したのか、という疑問がアラブ世界には広がっている。あるいは第二のアラブの春が、2021年には始まるのかもしれない。それはアメリカ製ではなくて、アラブ自身の手で、始められるのではないか。