『トルコ軍シリア北部から一部撤退』

2020年12月19日

 トルコ軍がシリア北部から一部撤退したようだ。これは、シリアのイドリブとアレッポの農業地帯にあった軍事基地からの、撤退を言っているのだ。イドリブの基地はサーマン基地と呼ばれ、アレッポの基地はカーン・トウマン、ラーシデーンの二基地だ。

 これはシリア内のトルコ軍基地が、シリア軍によって包囲されたために起ったのだ。つまり、トルコ軍は追い込まれていたということだ。これに先立ち、シリアにあったトルコ軍最大の基地も、にこれらの基地からの一ヶ月前に撤退が済んでいた。

 トルコ軍がシリア北部の占領にこだわったのは、この地域にはトルコがテロリストと呼ぶ、クルドのYPGが集結していたからだ。トルコはこのYPGを掃討することにより、自国の安全を確保しよう、と思っていたわけだ。

 この作戦はトルコの勝利に終り、YPGはシリア北東部から離れていた。そして、その後にはロシアとトルコ双方によって結成された、合同軍が同地域の安全を、確保していたということだ。

 シリア政府はと言えば、トルコの軍派遣はシリアの主権を侵すものだ、と非難していた。クルドのYPGとシリア政府との間には、明確な合意は交わされていないが、相手がトルコとなると、そうもいかなかったのであろう。

 問題は今回のトルコ軍の、シリアからの撤退が大分大きな規模で、進められたということだ。それはトルコ側に資金的に無理が、出てきているからではないだろうか。軍事力でトルコが大幅に、シリア軍に劣ることはないし、ましてやYPGとの軍事力格差は、トルコが優に勝っていよう。

 トルコがシリアから主要な軍隊の部分を、撤退させたということは、結果的にトルコはシリアに大軍を派遣したが、何の利益も得なかった、ということであろう。同じように、リビアでもやはりトルコは、何の利益も得ていないのではないか。トルコがGNA(西側リビア政府)に送った、武器代金も未払いであろう。

 エルドアン大統領にしてみれば、リビア派兵もシリア派兵も、国民向けの清涼飲料でしか、なかったのではないのか。多分、アゼルバイジャンへの派兵も、同じ結果になろう。それは、アゼルバイジャンもアルメニアも元はと言えば、ソ連の一部だったからであり、これらの国はロシアと陸つながりになっている、近距離に位置している国だからだ。

 アゼルバイジャンとアルメニアとの戦争には、ロシアが仲介に入り、いまではすっかりロシア指導で動いている。トルコはロシアとの合同監視に、当たるのみとなっているのだ。