『シリアは今後どうなるISはクルドは』

2020年12月22日

 いまのところシリアの国内情況は、ある種の安定を見ているのではないだろうか。トルコは資金難もあり、撤退の方向に動いており、今後は、トルコがシリアの安定を邪魔することは、出来なくなりそうだ。

 残る外国勢力による、シリアの安定破壊の動きはどうか。アメリカ、IS(ISIL)、クルドなどはどう動くのか、ということが気になる。クルドは外国勢力ではないので、後回しにして、最初にアメリカのシリア対応を、考えてみよう。

 アメリカはトランプ大統領が宣言した、シリアやイラクからの撤兵が、部分的には実現しよう。それはバイデンに大統領に代わっても、同じではないだろうか。何せアメリカはいま、資金難で動きが取れなくなっているのだから。

 アメリカがシリアから部分撤退するのは、シリアのユーフラテス川の東岸にある、石油地帯からだ。そうなると今度は、その石油地帯のアメリカによる支配は、不安定になろう。そこで考えられるのは、アメリカによるIS(ISIL)の復活起用だ。

 多数のIS(ISIL)戦闘員が、動き出すことが予想される。シリアの難民キャンプにはIS(ISIL)の戦闘員や家族が、多数居住しており、一部はイラクに移送されているのだ。従ってアメリカが、IS(ISIL)を戦闘の場に投入することは、容易だということだ。

 こうなると、石油もIS(ISIL)に一部、引き渡されることになろう。その結果は、クルドのSDFYPGが、苦しい台所事情になるということだ。アメリカはこれまでクルド勢力を、傭兵のように使い、石油収入の一部を回していたのだから。

 もしこの通りであれば、近い将来クルドのSDFYPGと、IS(ISIL)との間に、武力衝突が起ることが考えられよう。結果は新しい戦闘のパターンが、シリアで生まれるということだ。アメリカはそれを止めるとは思えない、放置するだけであろう。

 さて、クルドとシリア政府とはどう動くのであろうか。クルドの戦闘員はシリア国民であることから、シリア政府とは取引が行われよう。シリア政府とクルドのSDFとの間で、将来のシリア北部での、自治権を巡る話し合いが付けば、彼らは協力し合えるということになろうということだ。

 シリア政府とクルド勢力とは、これまで真正面から、衝突してこなかったこともあるが、IS(ISIL)とシリア軍は、何度も衝突しているのだ。その事は今後、シリア政府軍とクルド勢力が一体となり、IS(ISIL)と対峙することになる、ということだ。

 最終的にはIS(ISIL)が、ぼろぼろにされてしまうのではないか。ヨーロッパ諸国もこの戦闘では、シリア軍とクルド勢力を、裏から支持することになろう。やはり、IS(ISIL)の賞味期限は切れた、ということではないのか。そして、アメリカのシリアでの石油泥棒も、許されなくなってきている、ということであろう。