『ポンペオ国務長官の西岸入植地訪問』

2020年11月20日

 アメリカのポンペオ国務長官が、ヨルダン川西岸地区にある、イスラエル人の入植地を訪問した。その事は特別な意味が無いだろう、と考える人が多いだろうが、これはアメリカ政府が完全に、イスラエル・パレスチナ問題に対する、立ち位置を変えた、ということだ。

 その結果、パレスチナ人が考えるような、パレスチナ問題の解決はありえなくなった、ということだ。入植地をアメリカの国務長官が、公式に訪問したということは、その入植地はイスラエルの領土だ、と認めたということだ。

 加えて、ポンペオ国務長官はヨルダン川西岸の入植地で、生産されたワインなどを『メイド・イン・イスラエル』として認めると言い出している。つまり、これでヨルダン川西岸の入植地は、イスラエルの固有の領土として、アメリカが認めたということが分かろう。

 しかも、ポンペオ国務長官はゴラン高原も訪問している。これはこれで、シリアとイスラエルとの和平を、永久に駄目にしたようなものであろう。ゴラン高原は1967年の第三次中東戦争で、イスラエル軍が占領した地域であり、以来、今日なおイスラエル側が占領し、領土の一部と見なしているところだ。

 最初、ポンペオ国務長官はイスラエルに、トランプ大統領からのプレゼントを持ってきたと言ったが。その意味がピンとこなかった。確かにヨルダン川西岸の入植地を、イスラエル領土と認める訪問をし、そこの生産物をイスラエル製品、と認めたということは、イスラエルにとっては中東問題が、大進展したということであろう、

 もちろんアラブ諸国は、ポンペオ国務長官の今回のイスラエル訪問を、非難しているが、その非難の声は小さい、アメリカが怖くて大声で、それを言うことは出来無いということであろう。第一、当事者であるパレスチナも、この重大な変化の時期に、イスラエルとの協力を言い出しているのだから、あきれるしかあるまい。

 パレスチナ問題が何の進展も見えず、ヨルダン川西岸地区がどんどん、イスラエルによって侵食されているのは、基本的に、パレスチナ人のイスラエルに対する対応に、真剣さが無いからであろう。

 パレスチナ自治政府も、それ以前のPLOも、結局はイスラエルに対してごねることによって、アラブを始め各国から援助が集まり、それをパレスチナ幹部が自分たちで、山分けし合って、革命貴族になっていたのだ。

 私がパレスチナ問題にほとんど関心を、示さなくなったのはこうした事情からだ。多分、今後もパレスチナ問題には進展は無く、パレスチナ国家が独立することはありえず、最終的にはイスラエルに、飲み込まれてしまうのであろう。

 パレスチナの幹部たちは、そうなればイスラエルの法律に従って、権利を主張すれば、人口でまさるパレスチナの方が優位になり、パレスチナを併合したイスラエルは、パレスチナのものになる、と考えているのでは無いのか。

しかし、ユダヤ人はその事を充分に分かっているので、既に対抗策はあろう。パレスチナ人は相当部分がヨルダンやエジプトに、追放されてしまうのではないのか。