『アルメニア撤退無しにトルコの勝利は無いという話』

2020年10月10日

 ロシアの仲介で、アゼルバイジャンとアルメニアの停戦の話が、動き出している。それは結構なことで、アゼルバイジャンもアルメニアも、このロシアの呼びかけに応え、モスクワに出向くことになった。

 ロシアは元アゼルバイジャンもアルメニアも、抱え込んでいた国であり、未だに両国への影響力は相当なものなのであろう。従って、ロシアが出てきたということは、当然であり、自然であろう。

 だが、これはトルコにとっては、主役の座を追われる可能性のある話だ。トルコは戦争を継続するにしろ止めるにしろ、自分のイニシャチブで進める、と考えていたろう。戦争が続いている間に、アゼルバイジャンに対しても、アルメニアに対しても、釘を打ち込んでおこう、という作戦なのだ。

 この話は今回のロシアの台頭で、失敗する可能性が、高くなってきているのではないか。リビアでも途中からロシアが送った、傭兵部隊ワグナーの台頭で、トルコの影は薄れ、主役の座を追われている。

 もちろん、リビアの場合はロシアだけではなく、アラブ首長国連邦もアメリカも、サウジアラビアも反トルコで動いてはいたのだが。いずれにしろ、いまリビア問題でトルコは完全にメインストリームから外され、代わってエジプトが出てきている,

 アゼルバイジャン・アルメニア戦争で、最近言われ始めているのは、アルメニアがナゴルノカラバフから撤退しない限り、トルコには勝ち目は無いということだ。しかし、これは大分無理な話ではないか。

 トルコはアゼルバイジャンとアルメニアとの戦争で、善意の第三者と言いながら、実戦に参加しているのだから、アルメニアがそう簡単に引きはすまい。そして、アルメニアの形勢が悪化すれば、当然ロシアに支援を、求めるだろう。

 そもそも、ナゴルノカラバフはアゼルバイジャンの領土ではあるが、長期間に渡る同地域のアルメニアによる占領支配、その間に相当数のアルメニア人が移住しており、これを帰国させることなど、かなうはずもない。

 アルメニアがナゴルノカラバフから撤退しない限り、トルコの勝利はないという言葉は、紙に描いた持ちの様なものであろう。アゼルバイジャンとアルメニアとの戦争でも、トルコは最後に、貧乏くじを引くのかもしれない。

 シリアでは何の成果も無く終わりそうだし、リビアでも結局は何も得ずに引き上げそうだ。それにナゴルノカラバフ戦争でも、同じような展開になるとすれば、トルコの国際政治の場はなくなってしまおう。その後に来るのはトルコ・リラ安であり経済破綻だ。