『ロウハーニ、カラバフ戦争拡大を懸念』

2020年10月 8日

 イラアンのロウハーニ大統領は、アゼルバイジャンとアルメニアとの間で始まった戦争が、近い将来、両国間の戦争から、地域戦争に拡大することを、懸念している。このことは、ロウハーニ大統領とアゼルバイジャンのイリハム・アリエフ大統領との電話会談で、明かされたものだ。

 確かに、アゼルバイジャンとアルメニアとの戦争は、既に5日目に指しかかっており、戦況は激化しているようだ。その戦争のなかでイランに砲弾が、届いていることも懸念される原因だ。この砲弾は、アゼルバイジャンとアルメニアの、どちらから飛んできたのか不明だが、イラン領土内に落下している。

 似たようなことが、他の周辺国にも起るかもしれない、アゼルバイジャンはこれまで、アルメニアと戦争する度に、敗れてきているのだが、今回はどうしたことであろうか。実はアゼルバイジャンを軍事的に、支援しているのはトルコ軍なのだ。

 トルコ軍は大量の武器を、アゼルバイジャンに送るとともに、シリアで集めた傭兵を、3000人から5000人アゼルバイジャンに送り込んでいる、とも言われている。もちろん、トルコ軍の将兵もアゼルバイジャン側に入国し、支援していることであろう。一説によれば、トルコ軍の空軍機がアルメニア側を、空爆しているとの情報もある。

 今回のアゼルバイジャンとアルメニアとの、戦争が始まる少し前には、トルコとアゼルバイジャンとの間で、軍事演習が行なわれていた。その際送り込まれた将兵と武器が、そのままアゼルバイジャン側に、残されていたのであろう。

 トルコはこの戦争で、なんとしてでもアゼルバイジャンが、アルメニアによって奪われている、ナゴルノカラバフ地域を取り戻したいということであろう。それに成功すればアゼルバイジャンのガスや石油は、直線コースでトルコに届けられる、パイプラインを引くことができるようになるのだ。

 加えてこれまで、散々アルメニアによって非難され続けてきた、アルメニア人虐殺問題を胡散霧消する可能性があろう。アルメニア人は欧米に多数移住しており、そこでのアルメニア人虐殺キャンペーンは、世界のコンセンサスになっているのだ。これはトルコにとって、不名誉極まりない話であろう。

 従って、トルコはなんとしてでも、アゼルバイジャンに勝利させたいと考えており、アゼルバイジャンのイリハム・アリエフ大統領が、例え停戦から終戦を望んでも、許しはすまい。だがアルメニアとゼルバイジャンは、元ソ連の一部であったので、ロシアの面子もあるし、キリスト教徒とイスラム教徒の戦争であることも、問題を複雑化させていよう。

 そうしたことを考慮して、ロウハーニ大統領はアゼルバジャンで始めた戦争が、地域戦争に拡大する懸念を述べたのだ。エルドアン大統領は彼自身の野望のために、アゼルバイジャンとアルメニアに戦争を越させ、地域全体も危険にさらそうとしているのだ。