当たり前のことだが、ここに来てヨルダン王国は明確に、『エルサレムの管理権はヨルダン王国にある。』と言い出している。この時期にヨルダンが、何故その事を言い出したのであろうか。
これはエルサレムの管理権が、ヨルダン王国に帰属することを、明確にしたものだが、その裏には、いまアラブ首長国連邦やバハレーンが、イスラエルとの関係を正常化させたことに、あるのであろう。
このアラブ首長国連邦とバハレーンによる、イスラエルとの国交正常化は、それに続くアラブ5カ国の正常化が語られているなかで、パレスチナ人たちが不安に、駆られているからであろう。
しかも、その5カ国にはサウジアラビア、スーダン、そしてカタールやクウエイトも含まれているのだ。もしその予測通りに進むとすれば、パレスチナ問題はパレスチナ自治政府には遠い話になり、2国家制もエルサレム首都も、夢になって消え去ろう。
そこでヨルダン政府は、エルサレムの管理権はヨルダン王国にある、と言うことによって、釘を刺したということではないのか。これではイスラエルが一方的に、エルサレム問題を解決することは、出来なくなろう。
イスラエルが勝手に進めている、パレスチナ領土の併合や、エルサレム問題は国際法的に見ても、イスラエルが違反していることは、いまでも明らかなのだ。従って、ヨルダン王国がこの管理権の問題を、持ち出すことによって、パレスチナ問題は振り出しに戻る、可能性があるということだ。
ヨルダンにしてみれば、国民の70パーセント以上が、パレスチナ難民のと、既にヨルダンの国籍を取得した、パレスチナ人たちによって、占められているのだ。従って、何らかの手を打たなければ、ヨルダン国内ではパレスチナ人による暴動が、起こる可能性もあり、そうなればヨルダン王家は、危険に晒さされることになろう。
いまのトランプ大統領ならば、パレスチナ・イスラエル問題の解決が、より公正に進められる、可能性もあるのだ。そうした諸般の事情を、充分に計算しての、今回のヨルダン政府の、発言であったろうと思われる。
エルサレムは833年前に、サラーハッデーン・アルアイユーブによって、解放されたのだ。その記念ということも、ヨルダン王国の今回の発表の裏には、あったのかもしれない。ヨルダン政府はこのことにより、パレスチナ人の連帯を強化し、国際の場でもパレスチナ問題を、アピールしていく方針だ。
そのために、ヨルダン王国はエルサレムの管理権を、打ち出すことにより、ムスリムとクリスチャンの権利、そしてエルサレムそのものを、守っていく方針だ。そして、その先には1967年の国境に沿った、2国家を樹立するということだ。ご立派の一語に尽きる。