『パレスチナは放置イスラエルUAE合意前進』

2020年9月10日

 イスラエルとアラブ首長国連邦が交わした、外交関係正常化の合意をめぐり、パレスチナ政府は強硬に抗議し、アラブ諸国に反対を呼びかけた。それはアラブ各国に対する個別の働きかけであり、アラブ連盟を通じての集団働きかけであった。

 しかし、どうも様子はパレスチナ政府の意向とは、異なるようだ。アラブ各国なかでもアラブ湾岸諸国は、程度の差こそあれ、アラブ首長国連邦とイスラエルが交わした合意を、黙認しその方向に時間をかけながら、移行しそうな雰囲気だ。

例えば、アラブ湾岸諸国のなかの雄である、サウジアラビア政府はパレスチナとイスラエルの平等の権利を叫び、パレスチナ国家の設立を口にしてはいるが、実際にイスラエルとの関係が前進している。サウジアラビアの宗教高位者は、関係を正常化しろ、とまで言い出しているのだ。

 サウジアラビア政府高官の、イスラエル訪問も語られている。それ以上に、サウジアラビア政府はイスラエル機の領空通過を、認めているのだ。その事について、サウジアラビア政府は何処の国の飛行機の、領空通過も認めるとし、イスラエルだけが例外ではない、と正当化しているのだ。

 バハレーンはアラブ首長国連邦に次いで、イスラエルとの関係正常化を進めるとみられており、アメリカの外交努力が進められているが、この国も多少の条件は付けながらも、正常化の方向にある。スーダンは国内事情を持ち出して、返答を濁してはいるが、方向はアラブ首長国連邦と同じだ。

 オマーンも然りであり、比較的ノーの意向が強いのは、クウエイトであろうか。この国が二の足を踏んでいるのは、パレスチナテロが怖いという、歴史的な経験があるからだ。

 そして、アラブ連盟だが、この組織はアラブ各国によって構成される組織であり、言わばアラブ各国の意向が出てくる場だ。最近そこからは、パレスチナ政府の意向に反対する方向が打ち出された。

 パレスチナ政府の言うような、全面的イスラエル反対の立ち位置は、受け入れられないということだ。そして、やはりアラブ首長国連邦の面子を守る、ということでもあろう。このアラブ連盟の事務総長は、歴代エジプトの外交官が就任してきていたが、いまの事務総長のアブルゲイトもエジプト人だ。

 エジプトは最初にイスラエルと関係正常化を進めた国だが、その結果エジプトはアラブ諸国から追放された経験がある。いま勇気をもってイスラエルとの関係正常化を、進めたアラブ首長国連邦を、擁護しないわけには行かない、ということであろう。

 時計の針は確実に前進の時を刻んでいるのだ。時代に逆行することは、自身を傷つけることになろう。パレスチナ政府も次第に怒りを、抑える方向に動き出している。それは自然の成り行きではないのか。