『リビア報道に見るエジプトとトルコの主役交替』

2020年9月27日

 このところトルコから出て来る、リビアに関する情報が、激減している。ほとんど出てきていない、というのが実情だ。他方、エジプトからはほぼ毎日のように、リビアに関する情報が、発信されている。

 リビアとヨーロッパ諸国との関係や、リビアに関する国連の対応などだ。合わせてリビアのハフタル将軍や、西側政府GNAの議長のカイロ訪問、といったニュースも伝えられている。

 リビアからはトリポリ攻防戦が起ることを、懸念する国連の報道も、エジプト経由で伝えられている、これまでならリビアについては、何と言ってもトルコが主幹であり、ニュースもトルコからだったのだから、その様変わりに驚かされる。

 リビアからはコロナ感染者が3万人出た、という報道があったが、これはトルコ軍のリビアに於ける情況を、間接的に伝えているのではなかろうか。1万人を超えるシリア人傭兵を、リビアに送り込んだトルコは、自国軍がコロナに感染し、苦しんでいるのではなかろうか。しかし、こうしたニュースはトルコ国内で、反政府運動を起こす危険性があるとして、伏せられているのではないのか。

 トリポリ攻防戦への国連の警告も然りで、このような戦闘が繰り広げられるとすれば、トリポリでGNAが弱体化し、LNAが攻勢に出ている、ということであろう。もう、リビアでのトルコ軍の作戦に協力する、ヨーロッパの国はイタリアのみということだが、そのイタリアも完全に腰が引けてしまっているのだ。

 関係がいいはずのロシアも、傭兵を送っているのは、反GNAのLNA側であり、トルコとは対立しているのだ。しかも、国際組織例えば国連などは、リビアへの武器供与や軍の派兵は止めて話し合え、とだけ言っている。

 そこで非難されているのは、紛れも無くトルコ政府なのだ。リビアでのコロナの問題が拡大しているなかで、シリアでもコロナは拡大している。シリアに派兵されているトルコ軍将兵も、コロナ感染の危険にさらされているということだ。

 しかし、トルコからはリビアやシリアでコロナに感染し、死亡したトルコ軍将兵のニュースは全く伝わってきていない。死体はどう処理されているのであろうか。死体は一つの墓穴に投げ込まれ、土をかぶせられているのであろうか。こうなると政府による犯罪行為、ということになり、将来は大スキャンダルとなろう。

 エルドアン大統領の転戦また転戦という、勢いのいい政策も、終りを告げつつあるようだ。もうそんなことをする意欲も資金も、枯渇して来ているのであろう。後はエルドアン体制の、崩壊を待つのみか。

 そういえばエルドアン大統領の最大の政敵、弾圧相手であるギュレン・グループのザマン新聞編集長が、釈放されたというニュースが伝えられた。これはエルドアン大統領の強硬策の、終りの始まりを意味しているのかもしれない。