『トルコはレバノンでも戦争したいのか』

2020年8月22日

  レバノン政府はトルコが大量の武器を、レバノン国内に送っていることを、懸念している。それもそうであろう。単に機関銃など軽火器を送るだけではなく、大砲やロケット砲なども送り付けているからだ。

 一体、レバノンの何処の誰に、トルコはそんな武器を大量に、送っているのであろうか。レバノン政府の情報部が語るところによれば、送られている地点は、レバノン北部であり、そこにいるムスリム同胞団が、受取人だということのようだ。

 ムスリム同胞団はエジプトで始まり、現在では非合法となり、多くのメンバーが国外に脱出しているが、それがレバノンにも入り込んでいるということだ。不確かだが、その数は2万人を超えているという、記事を読んだことがある。

 ムスリム同胞団とエルドアン大統領との関係は、イスラム主義で繋がっており、これまでも、エルドアン大統領はムスリム同胞団を、支持し支援して来ていた。それがいま、レバノンに多数集まっており、充分に一つの組織として、機能できる段階に、入っているのであろう。

 こうなると、レバノンはキリスト教徒、ムスリムスンニー派、ムスリムシーア派、そしてヘズブラといった、多くの政治軍事組織の集合体ということになり、国内統一は困難になろう。しかも、このレバノンはいま欧米や中国が、一大拠点として狙っているのだ。

 中国は一帯一路の西側の拠点として、ここからアフリカにも出て行く方針のようだし、ヨーロッパのフランスは昔のように、レバノンを自国の支配下に置こうと考えている。アメリカもレバノンのヘズブラを打倒してしまえば、イスラエルの安全は格段に上がる、と考えているのであろう。

 トルコもレバノンはオスマン帝国時代の領土であり、トルコにも権利があるとでも思っているのであろうか。考えようによっては、それだけレバノンは魅力的な場所なのであろう。昔、レバノンは山に行けば夏でもスキーが出来、海岸に行けば水泳が出来る、絶好の観光地といわれてきた。

 加えて、レバノン料理は中東随一の、美味さで知られている。レバノン人は賢く、旧宗主国フランスとの関係で、フランスのファッションは即座に持ち込まれ、コピーが造られてもいた。

 トルコがこのレバノンを手に入れたい、と考えても何の不思議もあるまい。もし、レバノンを抑えることができれば、トルコは相当の圧力をイスラエルに、かけることも可能となろう。その段階では、レバノンの各派に対し武器を送り、援助をすることによって、取り込んでしまうだろう。

 その段階では、トルコがレバノンで戦闘を、展開することは充分にありえよう、シリアやリビア、イラクではいまだに経済的メリットは、得られないでいるが、レバノンなら容易だ、と考えているのであろうか。

 だが、レバノン人は賢い、政治交渉はそう簡単ではないだろう。東地中海の海底エネルギー資源開発には、レバノンを取り込むことは、メリットを生み出すかもしれない。東地中海の海底エネルギー資源は、北上するほどに、埋蔵量が大きいと言われている。

 トルコの経済は大分苦しいのであろう。世界に多く出現している、デフォルト国家にトルコも数えられている。そのための当たり構わぬ、行動なのかもしれない。その成果が上がればいいが、成功に至らなければ、新たな火傷に繋がるかも知れない。