『UAEイスラエル外交関係成立はアラブに分裂と対立生むか』

2020年8月15日

 アラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルが、正式に外交関係を結んだことにより、アラブ各国から異なる反応が出ている。これにはトルコも加わり、一見、対立は激化の方向にあるように見える。

 

 サウジアラビアはアラブ首長国連邦の、イスラエルとの外交関係締結について、特別にコメントしていないが、それは合意を認めるということであろう。サウジアラビアも政府の高官がイスラエルを訪問し、裏では相互訪問と協力が進んでいるからだ。

 これに対し、オスマン帝国の末裔と称している、トルコのエルドアン大統領は激怒しており、アラブ首長国連邦との関係を絶つ、と言い出している。しかし、それはトルコの経済にとっては、決して得策ではあるまい。ただ、トルコとアラブ首長国連邦は、リビアでも対立しており、いい関係にあるとは言え無い。

 エジプトはイスラエルとの外交関係が、大分前に成立していることから、今回のアラブ首長国連邦の決定は、アラブのなかのエジプト批判を、軽減するものとして歓迎している。エジプトはイスラエルと国交正常化に、合意したとき以来、アラブのなかでは拒否されてきたが、時勢もあり、最近では正常な関係の国が増えている、しかし、感情論は今でも残っていよう。

 今回のアラブ首長国連邦の決定で、一番ショックを受けたのはパレスチナであろう。当然、パレスチナ政府は同国に噛み付いているが、何も出来無いのではないか。せいぜいこれをネタに、援助金を増やさせる程度であろう。

 他方、ハマースやヘズブラは猛反対であり、やがてイスラエルには災難が起こるだろう、といった警告の言葉を、ヘズブラは放っている。つまり、イスラエルへの軍事攻撃もある、ということだ。

 イエメンのアンサールッラー組織も、アラブ首長国連邦の合意を非難しており、何らかの軍事的な行動に、出るかもしれない。しかし、それは形だけのものではないか、と思われる。リビアのセラジ政府(GNA)も、この合意に反対しているが、それはトルコの意向を受けてのものであろう。

 イランは今回の合意が平和ではなく、抵抗運動を激化させることになろう、と予測している。ただ、イランとアラブ首長国連邦との関係は、改善しておりイランがこれといった動きに出る、とは到底思えない。

 こうしてみると、相対的には時代の影響なのであろうか。今回のイスラエルとアラブ首長国連邦との関係正常化は、アラブ各国に受け入れられる方向にあるようだ。