トルコのエルドアン大統領が考える構想は、常人の理解するところではないようだ。彼は本気でカリフ時代を再現しようと思っており、その結果、自身はカリフになるつもりで、いるようだ。
隣国シリアへ軍を進めたのは、シリアはオスマン帝国時代の、自国領土だと考えているからであり、リビアへの派兵も然りだ。加えて、北イラクについても同様に考えており、そこでも戦闘を展開している。
今度はシリアに於ける、トルコ軍の存在を明確にするために、シリアの北部ラタキアの街に近い処に、軍事基地を建設することを決めた。この地域はロシアが借り受けており、ロシア空軍にとっては地中海で、唯一の空軍基地ということだ。
それだけにロシアにとっては、海軍基地のタルトース港と並んで、ラタキアは手放せない軍事的要衝と言える、場所ということになろう。その目と鼻の先にトルコ軍が基地を建設するということは、シリアだけではなく、ロシアに対しても挑戦意思がある事を、示す結果となろう。
当然、それは今後のトルコ・ロシア関係に、悪影響を及ぼすものと思われる。リビアでは実際に、ロシアとトルコは敵対関係にあるのだ。ロシアが派兵した傭兵組織ワグナーが、トルコ軍とにらみ合っている。
今度、ラタキアの近くに建設される、トルコ軍の基地はジャバル・アクラードという地域であり、これに対応すべくシリア軍が、ラタキアに向かっているということだ。こうした動きのなかで、未だに不明なのは、トルコ軍基地が幾つ、シリア国内に建設されているのかという点だ。
トルコ軍のシリア展開では、トルコが語るのには、シリア政府軍によって地域住民が攻撃を受け、苦しんでいるのでそれを助けるためだ、という話になる。しかし、実際には今回の動きでシリア北部がトルコ領に取り込まれるということであろう。
トルコはロシアとの間で、3月に交わした合意を、全く守っていない。この合意は戦闘拡大を、停止する目的であったのだが、実状はその逆だ。アラブ首長国連邦はこのトルコの蛮行に、腹を立てしかるべき対抗策を、取る方針でいる。
アラブ首長国連邦にしてみれば、トルコ軍がアラブ首長国連邦と敵対関係にある、カタールに駐留しており、明日はわが身という、危機感からであろう。だが、これだけ戦域を拡大して、トルコは大丈夫なのであろうか。
資金難に苦しむトルコでは、トルコ・リラの下落が続いており、遂に中国の一帯一路に賛成することで、資金を借り受けるつもりでいるようだ。しかし、中国はトルコが考えているほど甘い国ではない。結果的に、トルコの稼ぎ頭の観光地が、中国の支配下になることも、充分ありえよう。どうするエルドアン大統領?