『目立ち始めたエジプト二つの動き』

2020年7月31日

 エジプト政府はシリアの、アサド体制を守るために、軍を派兵することを決めた。これは明らかに、トルコを意識しての動きであろう。述べるまでもなく、トルコはアサド体制打倒のためにシリアに、軍事介入しているのだ。

 この段階に入って、エジプトがシリアに軍を派兵するということは、そのトルコの野望を潰すためであろう。トルコのリビア介入もしかりであり、これはエジプトにとって、極めて危険な動きなのだ。

 トルコの支援するリビアの、セラジ政権GNAが勝利すれば、リビアはムスリム同胞団の国家になってしまうからだ。それはエジプトの敵対組織であり、エジプトは不安定になろう。だからエジプトはいまリビアへの軍事介入も、考えているのだ。

 エジプトがここまで意志を固めたのは、シリアでもリビアでもトルコ軍の介入は、トルコにとって厳しい経済状態と、国内不満が拡大してきており、しかも、世界からも支持されていないからであろう。

 つまり、エジプトが思い切った動きに出始めたのは、トルコが弱体化してきている、と判断したためであろう。トルコの勢いが盛んであるときは、易々と手を出せば、大火傷するだけだからだ。だがいまはそのチャンス、とエジプトは見たのであろう。

 同じように、エジプトはイエメン問題をめぐり、サウジアラビアの対応の変化を、歓迎している。サウジアラビアは長期化、し膨大な資金をつぎ込んだイエメン戦争は、終わりそうも勝利しそうにも、見えないのだ。

 そこで、サウジアラビア政府は、イエメン介入を手控える方針に、変えたのだ。そのためサウジアラビア政府はイエメン内紛の政治解決を、提案し始めたのだ。サウジアラビアは同時に、アラブ首長国連邦にイエメン関与について、手控えるよう働きかけている。

 しかし、サウジアラビアは未だに、イエメンの二つの勢力が、イランの影響下にあるホウシ・グループと、敵対し戦うことを勧めている。こうなると、サウジアラビアはイエメンの二つの組織に対して、武器や資金を送っても、直接戦闘には介入しない、ということであろう。それをエジプト政府は賞賛して、サウジアラビアを味方に付ける、という作戦であろう。

 こうなってくると、今後、エジプトがアラブ世界で果たす役割は、重要性を増して行くということだ。そして、そのエジプトの役割は多くの国々から歓迎され、逆にトルコは追い込まれていくことになろう。