コロナの騒ぎでほとんどのマスコミ話題が、紙面を占めている中東ニュースのなかで、危険な動きが進んでいる。それはレバノンのヘズブラとイスラエルとの、本格戦争勃発の可能性が高まっている、ということだ。
イスラエル政府は既に、特殊部隊を結成し、レバノンとの国境地帯に、送り込んでいる。これを迎え撃つのはヘズブラということだが、どちらに分があるのであろうか。武装面ではイスラエルの方が上だが、死を恐れないヘズブラの戦闘員は、イスラエル側にとって不気味であり、恐ろしい存在ろう。
何故ここまでレバノン・イスラエル関係が、緊張しているのかと言えば、ヘズブラがシリアに派兵し、ゴラン高原地域のそばで作戦を進めていること、そして次の段階ではイスラエル領土内に、侵攻する危険が迫っているからだ。
以前、2006年にレバノン・イスラエル戦争が起こったとき、ヘズブラの発射したミサイルがイスラエル領土内に着地し、相当な被害が出たことがある。そのために当時のオルメルト内閣は、辞任に追い込まれたほどだ。
今回戦争が始まれば、当時の比であるまい。相当量の新型兵器が、ヘズブラの手に渡っている。イランが供与したのだが、イランはヘズブラを使って、イスラエルに脅威を与えたい、と思っているのだ。
イスラエルによるシリア内の、イラン軍への攻撃も続いており、何とかしなければならないということであろう。イスラエル側はシリアへの、イランの旅客機の航行に対しても、急接近して威嚇いている。
イスラエル政府はイスラエルが本気だと言うことを、ヘズブラとレバノン政府は正確に認識すべきだ、と言っているが、レバノンの首相もそのことは、充分承知しているようだ。それでレバノンの首相が、ヘズブラのイスラエル攻撃を、阻止できるかという、と話は別だ。ヘズブラはレバノン政府の意向よりも、イラン政府の意向を、強く受け止めているからだ。
既にレバノン・イスラエル国境では散発的な交戦が始まっており、後はどの段階で本格的な戦闘に、変わるかということだ。もし、本格的な戦闘が始まれば、国境地域だけではなく、首都ベイルートも攻撃対象になろう。市民の被害も相当なものになろう。
レバノンではコロナの影響で、経済が壊滅的な状態にあり、庶民は食糧を手にするのにも、苦慮する状態になっている。先日もレバノンの家庭の冷蔵庫のドアが開かれ、何も入っていない様子が、伝えられていた。
コロナという大悪魔が、世界の住民を苦しめているなか、戦争という新たな災禍が、加わるということは、まさに地獄ということであろう。レバノンなかでもベイルートは、かつて中東のパリと、呼ばれていたのに。