『サウジアラビアのハッジは縮小で乗り切れるか』

2020年7月 8日

 

 サウジアラビアにあるメッカは、イスラム教の中心地だ。ここにはハッジ月に世界中から、250万人のハッジ巡礼者が集まるのが常だ。そのハッジ客から徴収するハッジ税が、どれほどの金額になるのかは知らない。例えば1000円と仮定して、25億円ということになろう。

 それが今年は何と1000人規模の、ハッジだけを受け入れる方針のようだ。その内訳はサウジアラビア国民が30パーセント、サウジアラビア在住の外国人が、70パーセントということのようだ。しかも、以前にハッジを行っている者は、認めない方針だということだ。

 こればかりか、ハッジ巡礼者が望むザムザムの水についても、好きなように飲めるのではなく、ペットボトルに入ったものを、買って飲む方式になるということだ。このザムザムの水は、メッカの地下から湧き出ているもので、アブラハムの妻ハジャルが、息子イスマイルのために見つけたという、故事に由来している貴重な水だ。

ハッジやオムラ(小巡礼)後には、必ずこのザムザムの水を飲むのが、慣わしになっている。つまり、ザムザムの水を飲む行為も、ハッジやオムラの一部になっている、ということであろうか、

ハッジ巡礼者はこの水を、ガロンのポリ容器に入れて持ち帰り、土産の一つにしている。そしてハッジ後にハッジの自慢と合わせ、この水を客に振舞っているのだ。なんとなくとろみを帯びており、硬水でない軟水であることが分かる。このような軟水は砂漠地帯では、めったに湧き出ないものだ。

悪魔の石塔(ジャムラという石の塔が三つある)に対する投石行事も、ハッジ巡礼者が殺到するため、コロナの感染を恐れて、規制されることになったようだ。ここでは過去に、何度もハッジ巡礼者が押しかけ、倒れた者が踏み潰される、ということが起こっている。

2006年に多数の(300人以上)ハッジ巡礼者が死亡したイランは、サウジアラビアとの間に政治問題にまで、発展したことがあるほどだ。こうした事故は1990年にも起こり、1400人が死亡している。

これだけ大きな影響をもたらしている、サウジアラビアのコロナの情況は、どうなっているかというと、毎日3~4000人が罹病し、死者の数はいまの段階では1968人で、現在の段階では合計で、213000人が罹病しているということだ。この数字も素直には信じられない。その倍か3倍は罹っているのではあるまいか。

ハッジが認められるのは20歳から50歳までで、身体強健な者ということであろう。また、今回の新規定ではメッカのカアバ神殿に、触れることも禁止された。カアバ神殿はキスワという織物がかけられてあり、その布にキスをしたり、手で触れるのが慣わしだし、カアバ神殿の中にある黒石に触れることも、ご利益大として行われている。

加えて、ハッジ巡礼者はマスク着用も、義務付けられている。暑い盛りのハッジに、マスクを着けての巡礼は、それだけでも健康を害する者が、多発するのではないか。つまり、今年のハッジは異例なものであり、ハッジとは呼べないようなものではないのか、その事は必ず世界のムスリムから批判されることになろう。