『エジプト・リビアへの派兵に備える』

2020年6月29日

 

 エジプトは遂に、リビアに派兵する方針を固めたようだ。それは現在正統政府と国連が道認めている、セラジ首相のGNAがムスリム同胞団と、強い関係にあることに、起因している。ムスリム同胞団はムバーラク体制を倒し、権力を掌握した組織であり、それは後に、シーシ将軍によって打倒されている。

 そうしたことから、エジプトはリビアのハフタル将軍側を、支持し続けてきていた。シーシ大統領によれば、リビアはエジプトにとって、レッ、ドラインの国家であり、何としてもエジプト寄りにしたい、と考えている。

 エジプトはGNA軍がリビアのシルテニ接近し、そこを抑えることを、防がなければならないのだ。しかし、最近ではリビアへのトルコ軍の侵攻が、GNA側を有利にし、シルテはGNAの手に落ちる、懸念が拡大している。

 シーシ大統領は再三に渡って、セラジ政府側に停戦を呼びかけているが、セラジ政権はこれを拒否している。それはリビアの意向と言うよりも、トルコの意向であろう。トルコは何とかリビアの主権を、セラジ政権で守り通し、同国とトルコとの経済関係を始め、関係強化を図りたいからだ。

 そのために、トルコはアルジェリア政府や、チュニジア政府にも、働きかけてきている。これに対し、アルジェリア政府は中立の立場を取り、チュニジアはセラジ政府寄りに、変化しつつある。

 ハフタル将軍側LNAは、追い込まれているとは言え、リビアのほとんどの石油地帯を、支配下に置いていることに、変わりはない。石油はリビアにとって、生きるための血液であり、それ抜きには、GNA側も権力掌握は語れないのだ。

 こうしたことから、エジプトやロシア、アラブ首長国連邦はLNA支援を、続けているのだ。ただ問題は、主力の戦力はエジプトであろうが、リビアへの道のりは遠く、1000キロにも達するのだ。その移動が安全でなければ、ならないわけであり、そう容易なことではあるまい。

 そうしたなかで、ロシアの傭兵たちはLNAのふがいなさに、あきれているのか、撤収の姿勢が見え始めている。それにはもう一つ問題があり、トルコが徴用したシリアの傭兵の方が、給与がいいという話もある。

 その流れのなかでは、国連が唱える平和的対話による政治的解決が、唯一の頼りかもしれない。それにはアメリカもロシアも、賛成しているからだ。さて、シーシ大統領はこの難局にあって、どう決断するのであろうか。彼の度量と政治的判断を待ちたい。