『シリア経済苦のなか首相更迭』

2020年6月12日

 

 シリアのカミース首相がアサド大統領の発した、143号勅令によって更迭された。この更迭の原因は、経済問題が昂じたためだ。カミース首相は2016年から、首相職に就いていたが、現在58歳、政治家としてはまだ、現役の年齢なのに首になったのだ。

 後任にはフセイン・アルノウス水資源相が就任する。だが、このポジションは来月の投票日までであり、長期の指名ではない。

 シリアでは議会選挙が予定されているが、これまで2度延期されてきている。それはコロナ禍がシリア国内で、拡大した結果だった。コロナの拡大は緊急に、阻止する必要があり、議会選挙をやっている状態では、無かったということだ。

 7月に選挙が予定されているが、現在の経済問題をどう解決するか、ということが主題となろう。9年間のも及ぶ内戦のために、シリアの経済は大幅に悪化し、シリア・リラは1ドルに対して、3000リラにまで値下がりしている。

 シリア・リラの公式レートは1ドルに対して700リラだが、それは2011年の内戦開始以前と比べると、60倍も値下がりしているということだ。この2011年にスエイダで大規模デモが起こり、38万人が死亡しているということだ。

 この木曜日には、首都ダマスカスでデモがあり、庶民は反アメリカ法を訴えている。彼らは『アメリカの制裁に反対』と叫んでいるが、本音は急激な物価上昇に対する、抗議であろう。

 食品の値上がりは酷く,今年月から5月の間だけで、11パーセント値上がりしている。これでは庶民の貧困は、間も無く大規模に、拡大するものと思われる。こうした国内の経済問題の拡大に伴い、アサド大統領は彼の親族マクルーフの資産を、差し押さえしている。

 しかし、その事がシリアの経済改善に、役立つとは思えず、あくまでも親戚マクローフの資産差し押さえは、国民の不満の目を、ごまかすためだけのものであろう。そうだとすれば、シリアの国内混乱は、今後拡大していくということであろう。それはトランプ大統領の得意とする、経済戦争をシリアに対して、始めたということだ。