『悲惨な話・エジプトから』

2020年6月 6日

 

 エジプトから悲惨な話が、伝わってきた。この話とは、女性に対する割礼の話だ。男性がしかるべき年齢になると、割礼することは、一般的に知られているが、女性も然りなのだ。

 ただ、男性の場合は包茎手術と同じであり、安全なのだが,男性の場合とは異なり、女性の場合は、生死がかかっているのだ。アフリカなどでは、この女性の割礼が行われる中で、死者が多数出ている。それが貧困地域では、手術用のメスもナイフも無いために、ガラスのかけらなどで、行われるのだから、そうとうの痛みであろう。

 しかも、消毒薬などは用いられないのだ。幸運に手術が済んだとしても、出血の多いことや、術後の黴菌の感染で、死亡することもあるのだ。しかし、娘が死亡した後で、親たちは割礼をして、死亡したのだから、イスラムの法を守って死んだ殉教者、と賞賛して喜ぶのだ。

 こうした危険を、エジプトなどでは若い娘たちが、事情をよく知っており、その割礼から逃れようとする。今回のエジプトで起こった事件は、まさにそれだったのだ。娘はいま大流行し、死者が多数出ているエジプトで、コロナの予防注射をする、と娘を騙したのだ。

 コロナの予防注射など、エジプトにあるわけが無い。娘は父親が連れて行った、医者のところで、コロナのワクチンではなく、麻酔薬を打たれて、割礼の手術をされたのだ。  14歳のナダ・アブドルマクスードだった。

 しかも、この割礼の手術には、彼女だけではなく、それ以外の二人の娘も、対象になるところだった、ということだ。確かに、エジプトでは15歳から49歳の女性が、この割礼の対象になっており、87パーセントが逃れられない状態に、あるということだ。

 このナダ・アブドルマクスードの場合は、術後、離婚している母の元に逃げ込み、事情を説明して、救われたようだ。あるいは、ナダ・アブドルマクスードは不幸中の幸い、だったのかもしれない。命だけは助かったのだから。

 この問題は後に、政府の知るところとなり、厳しい取調べが、医師や父親に降りかかっている、ことであろう。だが、いまでもエジプトですら、割礼は宗教的義務だ、ということから、社会的にはこの医師と父親を、犯罪者扱いにはしていないだろう。

 宗教が生み出す迷信は、長い時間が経過しても、なかなか変わりそうに無い。国連の保険機構なり、国際法で禁止しても、あるいは効果と改善は、なかなか見られない、のかも知れない。