イランのロウハーニ大統領は、アメリカに対して『ここはペルシャ湾でありニューヨーク湾ではない。』と言った。述べるまでも無く、これはアメリカに対して、ペルシャ湾地域で余計なことをするな、と言っているのだ。
アメリカはペルシャ湾地域各国に働きかけ、イランに対する制裁を行っているが、アメリカのこの台頭はペルシャ湾各国に、平和をもたらすのではなく、かえって緊張を生み出しているもだ、と言ったのだ。
確かにそうであろう。最近ではアラブ湾岸諸国の幾つかの国が、イランとの関係正常化を進めたい、とアメリカの意向とは異なる動きを、示してきている。オマーンは歴史的にも、イランと親しい国であり、これまでも、アラブ湾岸諸国とイランとの関係が緊張する、と仲介役に回ってきていた。
加えて、カタールはイランとペルシャ湾海底ガスの、採掘をめぐって交渉している関係から、イランとは相互に意志の疎通が行われてきており、サウジアラビアの反イランとは異なる立場を、貫いてきている。
クウエイトは政治的な色は、表に出していないし、アラブ首長国連邦はイランとの貿易が盛んであり、アラブ首長国連邦には、本社を同国に置くイラン人ビジネスマンが、少なくない。
加えて、アラブ湾岸諸国にはイランと同じ、シーア派イスラム教徒が多いために、イランにシンパシーを感じている国民は多い。もし、政府が間違った政策を行えば、国民の不満が暴発する、危険があるということだ。
そうしたなかで、4月にアラブ首長国連邦のなかの、アブダビの皇太子が、シリアに対して、内戦の終息に祝意のメッセージを送った。これは間接的なイランへの、メッセージであったのだ。
シリアの内戦が終息に向かったのは、ロシアの協力もあるが、イランの革命防衛隊の協力も、重要だったからだ。こうしたメッセージをアブダビの皇太子が、シリアのアサド大統領に送ったことは、同国がイランとの関係修復を、急いでいるからに相違あるまい。
アメリカは勘違いから、アラブ湾岸諸国がもろ手を挙げて、アメリカの台頭を歓迎している、と思い込んでいる。まさに正義のガンマンになった、気分なのであろうか。しかし、アメリカのアラブ湾岸諸国への進出は、これらの国々に対して、武器を押し売りするために他ならない、と各国は受け止めているのだ。
それはアメリカを全面的に支持している、サウジアラビアも然りであろう。最近起こっている石油価格の暴落は、サウジアラビアがアメリカのシェール・オイルを潰す為のものだ、といわれている。
アメリカのトランプ大統領の義理の息子、クュネルがサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子にたきつけた、イエメン戦争にしろ、イスラエルとの関係強化にしろ、サウジアラビアの王族や国民からは人気がない。それどころか、イエメンからはサウジアラビアの石油施設が、ミサイル攻撃を受けてすらいるのだ。
アメリカのでしゃばりはいい加減にしろ、ここはペルシャ湾だ、と言ったロウハーニ大統領の一言は、アラブ湾岸諸国政府や国民の溜飲を下げ、喝采を受けていることであろう。ロウハーニ大統領あなたはよくぞ言ってくれました、ということだ。