:トルコというよりも、これはエルドアン大統領にとっての、重大な局面かもしれない、第一には、トルコ・リラが下げまくっていることだ。今年初頭には、ドルに対して5.95リラだったものが、昨日あたりでは6・91リラに、下がっているのだ。
リラが下がった理由は、コロナだと言ってしまえば簡単なのだが、そればかりではあるまい。エルドアン体制下で、トルコは幾つもの、ネガテブな決断をしている。第一には、シリアへの派兵と、リビアへの派兵であろう。
トルコ兵はこれら二国で、敵と戦うだけではなく、コロナとも戦わなければならないのだから、リスクは二倍三倍になるということだ。しかも、トルコ国内でもどんどんコロナ罹病者は、増えているのだ。
そして、トルコの失業率は上がり、14パーセント近くまで悪化しているし、インフレも同じような14パーセント・レベルに達している。これでは庶民の生活は成り立つまい。誰がこの問題を解決できるか、というと誰もいない。エルドアン大統領の義理の子息ベラト経済代大臣では、何ともなるまい。
ベラトに出来ることは、国民に現金を支給して、急場をしのいでもらうことだろうが、それは下手をするとハイパー・インフレを生み出すことになり、経済状態はますます悪化しよう。
もし、日本人の中にFXで、トルコ・リラを買っている人が、まだいるのなら、少しでも早く、売り逃げすることであろう。それ以外には損失を、抑える方法はあるまい。下がったトルコ・リラが今後上がるとすれば、希望的観測だが、2年3年先のことではないのか。
:もう一つ問題は、トルコのソユル内相の辞任問題だ。彼は日本の小池都知事と同じように、コロナ対応で強硬手段をとったが、その事で国民が買い出しに走り、マーケットは混乱した。
その責任を取って、ソユル内相は辞任すると言ったのだが、エルドアン大統領は彼の辞任を拒否し、内相の地位に留まるよう、説得している。この辞任劇の裏には、あるいはソユル内相のエルドアン大統領見切りの、判断があったのかもしれない。『沈む船からは早く下りたい』ということであろうか。
このソユル内相の辞任騒ぎは、与党AKP内部に、大きな反響を呼び、与党分裂の噂も出始めている。確かにそうであろう。元財相のババジャン氏や、元首相のダウトール氏も党を離脱し、いまでは新党を結党し、エルドアン大統領に挑戦しているのだ。
もし、ソユル内相が党を離脱し、新党結党に動けば、国民の支持は強いだろう、と見込まれている。それは彼のぶれない政治が、国民に支持されているからだ。与党内の重鎮であるソユル内相の離党は、AKPに大きなマイナス・イメージを、与えるだろう。
エルドアン大統領はといえば、2018年の選挙で支持を得て以来、彼は大統領権限を拡大したが、その事が昨年の選挙では、トルコの2大都市の市長選挙で、敗北することに繋がっている。どうも最近のエルドアン大統領は、幸運の神様に、逃げられたのかもしれない。