『トルコのボスポラス海峡閉鎖方針は愚挙か正当か』

2020年3月 2日

 トルコはシリア対応で,大分苦慮しているようだ。先日もトルコ兵が、16人イドリブ地域での戦闘で、シリア軍に殺されている。こうしたことは、エルドアン大統領に対する、トルコ国民の評価を、下げることにも繋がろう。

 それはそもそも、ロシアがシリア軍に対して、最新鋭の武器を供与していることに、起因している。ロシアがシリアに供与した、ミサイル、戦闘機、爆弾、砲などはまさに、最も進んだ武器であろう。

 そこで、トルコ政府が考えたことは、これらの武器がボスポラス海峡と、トルコ領空を通過して、シリアに運び込まれている、という点だった。トルコはボスポラス海峡を封鎖して、ロシアの貨物船や艦船の通過を、阻止する方針のようだ。 

 そうなれば大型の武器の、シリアへの搬入は、不可能となろう。いま、ロシアは大型輸送機を使って、砲や戦車、戦闘車両をシリアに、持ち込んでいるということだ。それに合わせ、トルコ軍は地中海東岸のタルトウス港や、フメイミムに対する、封鎖あるいは攻撃を、考えているのであろう。

 しかし、ロシア政府のスポークスマンの、語るところによれば、シリアには既に十分の武器を、供与済みであり、戦闘に事欠くことは無い、ということのようだ。シリア軍はトルコの監視所に対する、攻撃能力も、既に持っている、ということらしい。

 トルコは最近になって、4機のロシアの貨物機の、シリア入りを阻止している。この貨物機にはミサイル・ランチャー、戦闘車両、戦車、ミサイルも搭載されていたようだ。これらのロシア機は元々は、爆撃機だということだ。

 このトルコの措置が実際に、稼働するということになれば、ロシアとトルコの緊張は、一気に高まることになろう。これはロシアからトルコが、S400ミサイルを購入する頃とは、全く異なる雰囲気を、両国の間に生み出している、ということだ。

 ところで、ボスポラス海峡はトルコのイスタンブール市の、東西に挟まれる地域にあるわけだが、そのことをもって、トルコの海域、と限定することが出来るのであろうか。いままで、この海峡を通過するにあたっては、トルコが種々の条件を付けてきていたことは、確かなのだが、やはり国際海峡という考えが、一般的なのではないのか。

 そうだとすれば、戦争に絡んでいるとしても、トルコが一方的にロシア船の通過を、禁止することは、難しいのではないか、と思われるのだが。いずれにしろ、今回のトルコの、ボスポラス海峡封鎖の考えは、実行されれば、ただ事では済まなくなろう。唯一ほくそ笑んでいるのは、トランプ大統領であろうか。