『敗色濃いトルコ軍シリア戦線』

2020年2月10日

  トルコ軍は中東で最強の軍隊、と言われてきた。勇猛果敢なトルコ兵は、死が目の前に見えても、退かずに進撃する、と言われてきた。しかし、その勇猛果敢なトルコ軍が、最近のシリア軍との戦いでは、守勢に回っているようだ。

 それはサラーキブでの戦いのことだが、この戦いには、シリア軍にイランのIKRGC(革命防衛隊)が支援しており、空からはロシア軍機が、空爆を加えているようだ。つまり、トルコ軍はシリア軍ロシア軍イラン軍を敵に回して、戦っているということだ。

 トルコが守勢に回っているのは、それだけではない。欧米のマスコミが、トルコ軍の蛮行を、いち早く記事にしたい,と手ぐすねを引いて待っていることから、トルコ軍は相当自重して軍事行動を、行っているようだ。

 もう一つの問題点は、トルコが他の幾つかの国々と同じように、自国兵を前面に立てるのではなく、傭兵を使って戦っていることにあろう。そのトルコが使う傭兵は、FSA(自由シリア軍)と呼ばれる、シリア人のスンニー派の国民なのだ。

 これでは傭兵の戦意も下がろう、ということではないか。結果として、トルコ兵が前面に出るような場面になると、トルコ兵は戦闘になれていないこともあり、どうも勇敢に戦えていないのではないのか。

 トルコはシリア戦線の思惑外れに、ロシアに対して会議を持ち掛け、何とか体裁のいい停戦に、持ち込みたいと考えているようだ。それはロシアのソチで開催された停戦案などがベースなのだが、ロシア側は色よい返事を、してくれていない。

 ロシアにしてみれば、シリアからトルコ軍を追い出したい、というのが本音であり、シリア軍が戦闘意欲を燃やしている今、しかも、イランのIRGC(革命防衛隊)が参戦しているなかで、それを達成しよう、と考えているのであろう。

 シリア軍がこのまま、戦果を挙げていけば、最終的にはテロリストを、自国内から一掃でき、加えて、アメリカ軍を追放することも、次の段階では可能であろう。そうなればロシアは安心して、シリアに留まることが出来る。シリアはロシア軍にとって、貴重な地中海沿岸の国であり、同国のタルトース港は、代表的な、ロシア軍の手中にある、軍港になっているのだ。

 ロシアはトルコをこの窮から、救ってくれるのであろうか。それは虫のいい話ではないのか。そうだとすればトルコは今後、益々窮地に立たされる、ということではないのか。