トルコとシリアとの、軍事緊張が続いている。アレッポやイドリブに近い、シリア北部のトウカンやサラーキブという村だ。現段階では散発的な、銃撃戦が起こっている、といういうことだが、それで留まるという見通しは、立ってない。
トルコは既に、イドリブ近くに監視所を置いているが、そこから撤収するつもりはない、と言っているし、現状以上に安全地域を、拡大するとも語っている。加えて、トルコはこの地域に、軍の基地を新設してもいるのだ。
続々と運び込まれる、トルコからの戦車などを始めとする大型武器は、今後の緊張が高まることを、充分に説明している、といおうことではないのか。トルコ政府はロシア政府に対して、シリア軍の動きを阻止しろと言っているが、ロシアにして見れば、現在トルコ軍が展開しているのは、シリア領土なのだから、撤収すべきなのはトルコ軍だ、という理屈であろう。
他方、シリア軍はシリア北部の、アルカーイダの支配地域を奪還し、勢いに乗っている。それはロシア軍が後ろについている、という強みからであろうか。また、シリア軍はサラーキブにも侵攻しており、トルコ軍と目と鼻の先で、睨み合っているということだ。
このサラーキブ地域で、シリア軍とトルコ軍が武力衝突するのは、時間の問題とも見られている。そうなれば、戦闘は拡大し、双方に相当数の犠牲が、出るのではないかと懸念されている。
イスラエルはシリアに隣接していることもあり、ことさらにこの情況に、不安を抱いているようだ。イスラエルのエルサレム・ポスト紙は『シリア・トルコの軍事緊張から、戦争への進展は、地域全体に拡大するのか。』という記事を掲載している。
気の強いエルドアン大統領は、国内経済の不振もあり、この戦争でその経済不振への、国民の不安への眼先を変えたい、と思っているのであろうか。だが軍事緊張が高まるに連れて、トルコ・リラは値下がりし続けており。遂に1ドル6.02リラまで、下げてしまっている。
シリアのアサド大統領も、仇敵であるエルドアンの鼻を、何とかあかしてやりたいと考え、ロシアの支援をバックにやはり、強気の姿勢を維持している。イスラエルとの軍事緊張もあり、シリアは弱気を見せるわけには、いかないのであろう。
後は、ロシアがシリアとトルコとの仲介役から、シリア寄りに何時シフトするか、にかかっているのではないか、と思われる。現在のリビアをめぐる、トルコとロシアとの関係などを、総合的に考慮すると、ロシアのシリア支援は、強まるのではないのか。