『ロシア・トルコ関係複雑に』

2020年2月 5日

 シリア問題をめぐり、ロシアとトルコとの関係が、複雑になってきている。ロシアにしてみれば、シリアは盟友であり、軍を派遣しているのだが、そのシリアをトルコが攻撃したのだから、無理もあるまい。

 トルコに言わせれば、最初に攻撃を仕掛けたのはシリアであり、トルコには何の落ち度もない、ということであろうか。しかし、その後トルコはシリア軍の基地を多数攻撃し、トルコ軍の発表によれば、50以上のシリア軍基地を攻撃し、40人程のシリア兵が、死亡したということだ。

 このシリア軍側の犠牲者数については異論があり、人権監視委はシリア側の犠牲者数は、6人だったと言っている。つまり、シリアの攻撃による、トルコ側の犠牲者が6人であったことから、これでおあいこということであろうか。

 問題は、このトルコとシリア双方の攻撃の応酬で、終わったわけではない。これからが本番なのかもしれない。現に、トルコとシリアとの間では、その後も小規模ではあるが、戦闘が続いているようだ。

 ロシアはこの状況を、憂慮してであろうか、トルコはアルカーイダを支援している、と言い始めている。印象操作によるトルコの、イメージ・ダウンを図っているのであろう。だが、トルコがアルカーイダやIS(ISIL)と、協力関係にあることは、以前から言われていたことだ。

 他方、アメリカのポンペオ国務長官は、トルコ側を支援する発言を、行っている。曰く、イドリブでのトルコ軍の動きは正しい、としたのだ。これでトルコに対する、ロシアとアメリカのトルコに対する立ち位置は、明確になったということだ。

 さて。ロシアは何故トルコに対する、シリア軍の攻撃を知らなかった、と言ったのであろうか。そんなことはあり得ない。トルコ・シリア関係が極めてデリケートなことを考慮すれば、ロシアがこのシリアのトルコに対する攻撃を、知らなかったはずはないのだ。

 あるいは、ロシアはこの攻撃でトルコ側の出方を、見たのかもしれない。それでシリアにトルコ攻撃を、指示したということではないのか。ロシアはそのトルコの反応を見て、リビアでの立場を決めようと、したのではなかろうか。

 ロシアはリビアに傭兵を送り込んでおり、トルコもしかりだ。従って、近い将来、ロシアの傭兵とトルコの傭兵が、武力衝突する可能性は、極めて高く、そのなかで双方の軍人も、関わってくることもあり得よう。

 今回のトルコのシリア軍に対する、反撃の規模や作戦を、ロシアは分析しているはずだ。そのうえで、リビアにおけるロシアの、傭兵起用の規模や、作戦を決める、ということであったのではないか、と思える。考えすぎだろうか。