トランプ大統領が『世紀の和平案』、と銘打って発表した、中東和平案は、どうも名前ほどは、歓迎されてはいないようだ。反対意見は意外にも、イスラエルのユダヤ人の側から、少なくないようだ。例えば、元IDFのトップがトランプ案には意味がない、とバッサリ切っている。元CIAのトップも同じような感想を、述べているようだ。
そして、イスラエルのユダヤ人の間でも、この和平案を支持するのは、10パーセントに過ぎない、ということだ。それは、トランプ大統領のぶち上げた、世紀の和平合意が、和平をもたらしてくれるとは、信じがたいからであろう。
ユダヤ人のオーソドックスなラビ(ユダヤ教の学者)も、トランプ案を拒否している。もうこうなると、誰のために何が目的で、この世紀の和平案が出されたのか、疑問になる。トランプ大統領はあくまでも、彼の選挙のためにユダヤ人票を、狙って出したのだろう、と言われ始めているのだ。
パレスチナ側はどうかというと、マハムード・アッバース議長は和平案を、ぼろくそに非難しているし、国連の場でも彼の和平案反対を、主張するようだ。なぜならば、この和平案ではパレスチナ側には、選択肢が極めて限られているからだ。
西岸の入植地はイスラエル領土に併合され、大型の入植地であるマーレ・アドミウムも、イスラエル領土に併合されることになっている。加えて、エルサレムは不可分のイスラエルの、首都であるということから、パレスチナ側に与えられる首都は、エルサレムに隣接する、アブデスになっている。
ただ、このアブデス首都論については、アラファト時代にそのような合意が、なされていたのではなかったろうか。あの当時なら、ヨルダン川西岸地区への入植も少なく、妥協出来たのかもしれない、悲しいのは、アブデスからは黄金のモスクが、見えるということだった。
このトランプの世紀の提案に対して、反発しているのはエルドアン大統領ぐらいかもしれない。彼はトランプ案について、受け入れられないと語り、『トランプ案はパレスチナの土地を、奪うものだ。』と語っている。
またイラン政府はこのトランプ案について『トランプ案はショックであり、悪魔の選択だ。』と非難している。しかし、サウジアラビア、エジプト、カタール、アラブ首長国連邦、オマーンなどは、トランプ案を支持しているのだ。
それは時間の経過と共に、イスラエル側の入植が進み、パレスチナ側の土地が奪われていく、という現実を踏まえての、ことなのかもしれない。だが、パレスチナ自治政府としては、何としてもこの案を、拒否せざるを得ないだろう。
トランプ案は現実的な解決案だ、という見方も少なくないのだ。アメリカのポンペオ国務長官は、『そんなにパレスチナ側が文句を言うのなら、代替案を出してみろ。』と切り返している。
もちろん、パレスチナ側からはそんな、気の利いた案は出て来ず、あくまでもエルサレムの半分と、1967年合意の国境、あるいはオスロ合意に戻る、ということしかなかろう。