『中東の大国は消えたのか』

2020年1月29日

 中東の大国あるいは強国と言えば、つい最近までは、エジプト、サウジアラビア、トルコ、イランが挙げられていたと思う。それが最近では、そのどの国も、大国とも強国とも、呼ばれなくなっている。

 エジプトは人口が一億に近いことから、軍事大国と見られていた。確かに、エジプト軍は4度の戦争を、イスラエルと展開し、最後の第四次中東戦争では、勝利している。

 だが、最近ではそうした軍事強国の、イメージはエジプトには無い。それは大統領のキャラクターにもよろうし、ムスリム同胞団やIS(ISIL)の影響もあろう。このため、シーシ大統領は国内対策で、ほとんどのエネルギーを、消費しているのではないのか。

 サウジアラビアは石油大国として持てる資金力を生かし、他の国々への影響力を誇示してきていた。だが石油価格の低迷により、それは難しくなってきているようだ。

加えて、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の暴走で始まった、イエメン戦争やイランとの対立で、膨大な量の武器をアメリカから輸入し、台所事情は厳しくなっている。従って、札束で相手の頬を殴るような外交は、成立しなくなってきているのだ。

 トルコの場合はエルドアン大統領の、アクの強いキャラクターが、外国から強国のイメージを持って、受け止められてきていた。そのエルドアン大統領が始めた、シリアへの軍事介入、シリアとの国境地帯に、安全地帯を設置する計画、リビアへの軍事介入などで、経済的には相当、苦しくなっているのではないのか。加えて、エルドアン大統領はメガ・プロジェクトを、幾つも進めているが、その資金はほとんど、外国からの借り入れで賄われているのだ。

 その結果、エルドアン大統領が進める、外国への軍事介入は、何の成果ももたらすことも、勝利することも無く、だらだらと続けられている。それは、今後大きな経済的、ダメージへと繋がろう。

 イランの場合は二つの要因が、この国の経済の足を、引っ張っている。アメリカとの対立は、1979年の革命以来続いている。加えて、イラン政府が進めるシーア・イスラム圏連携リンク(シーアの弧)だ。

イラク、シリア、レバノン、イエメンなどのシーア派をまとめて、シーア地域諸国との、連帯強化を図るという考えだ。そのことによって、アメリカなどに対抗しよう、という考えだ。だが、この計画は膨大な資金を、必要とするということだ。

 そのため、イラン国内では日に日に、国民の不満が高まっており、将来的には、体制の弱体化と、国民による抵抗が,強まって行こう。

 こうしてみてみると、強国と言われた中東の諸国は、国内に問題を抱え、国外に敵を持っている、ということから、弱体化が進んでいる、ということであろう。

 中東の主要な国々が弱体化すれば、欧米はこの地域を、自分の好きなように、いじ繰り回せるようになる、ということだ。それはあ中東諸国全体が今後、ますます苦しい状態に、追い込まれていく、ということであろう。トランプ大統領が打ち出した、パレスチナ・イスラエル和平の推進案などは、パレスチナ人を完全に無視し、馬鹿にしたものだが、それに対し、ほとんどのアラブ各国の反応は、遠慮勝ちなのだ。