『エルドアンのリビアへの夢は壊れたか』

2020年1月21日

 トルコのエルドアン大統領は、オスマン帝国の復興を夢見ていた。それは今でも続いていると思われる。トルコ軍のシリア侵攻も、イラク北部への駐留も、リビアへの軍事介入も、全て彼のオスマン帝国復興の夢に、沿ったものであったと思われる。

 エルドアン大統領はリビア西部を支配する、国連が承認しているセラジ政府との間に、地中海を二分する領海設定に合意している。それは海底の石油・ガス資源を、開発することが目的だった。

 続いてエルドアン大統領は、西リビアのセラジ首相を支援すべく、トルコ軍を派兵することと、武器を供与することに、合意している。まず、最初にエルドアン大統領がリビアに送り込んだのは、シリアの傭兵たち400人程だった。この後を追ってエルドアン大統領は、トルコ軍を送り出す予定であった。

エルドアン大統領は手始めに、軍事顧問を送ることにしていた。もちろん軍事顧問団だけではなく、シリアからの傭兵も増派する予定であったろう。そのことによって、セラジ政府体制をしっかり、守ってやるつもりでいたものと、考えられる。

 だがそのエルドアン大統領のリビア構想は、ベルリンで開催されたリビアをめぐる、和平会議で潰れたのではないか。会議の結論は『リビアには武器を送らない』『リビアには派兵しない』というものだったからだ。

 これは明らかに、トルコのリビア対応に、ブレーキをかけるものだった、と思われる。これを受けてエルドアン大統領が語ったのは、『リビア問題は話し合いによって解決する』という立場と、その後の『トルコは軍事顧問は送るが、兵士は送らない』というものだった。

 一見、エルドアン大統領はベルリン会議の結論を、真正面から受け入れたように思われるのだが、そうではあるまい。エルドアン大統領は今後、在リビアトルコ人の安全確保のためとか、トリポリ市民の安全を守るためといった、人道的な目的と称して、再度派兵することを画策しよう。だがそれには、やはり限度があるのではないか、と思われる。

 なぜこうしたトルコの意向とは、真逆の結論がベルリン会議から出て来たのかは、セラジ政府と対抗する、ハフタル将軍側を多くの国々が、支援していることを考えれば分かろう。

 ロシア、アメリカ、フランス、イギリスなどに加え、アラブからもサウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトなども、ハフタル将軍側を支援しているのだ。言うまでもない、欧米諸国がハフタル将軍側を支援するのは、彼がほぼ勝利しているからであろう。 

 この結果、エルドアン大統領は何の利益も得ることなく、リビアから手を引かなければならなくなるのではないか。それは彼にとっては、極めて屈辱的なことであろう。もちろん、彼にはリビア問題の今後をめぐる会議で、発言権だけは残されていよう。