『リビア停戦から終戦への会議ベルリンで』

2020年1月20日

 2001年にカダフィ体制が崩壊して以来、リビアは内戦状態を続けてきていた。この内戦で280人の市民が死亡し、2000人の戦闘員が死亡した、と報告されている。加えて、この内戦下で146000人の市民が、戦火を逃れ他の場所に、逃亡している。

 これまで世界の各国は、東西に分かれたリビアのいずれかを、支援し続けてきたために、内戦は長期化したのであろう。西のトリポリを拠点とする、セラジ政府側には、イタリアやトルコ、カタールなどが支援を送り、東のハフタル将軍側にはエジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ロシア、アメリカなどが、支援を送っている、と言われている

 先にモスクワで開催された、ロシアとトルコの主催の、リビア停戦会議では、セラジ首相とハフタル将軍が参加したが、合意には至らなかった。その後、ハフタル将軍が重い腰を上げて、停戦合意書にサインしている。

 このモスクワ会議の、暫定的な合意を踏まえた形で、ヨーロッパ諸国やアメリカが、ベルリンに集まり、リビア和平会議が開催された。述べるまでもなく、46か国の参加国は、いずれも自国のリビアでの、権益を確保することを、目的として参加したのだ。

 会議ではまず完全な停戦を、実現することが合意され、次いでリビアへの武器の搬入や、兵士の派遣を止める、ということが合意された。主に、武器や兵士を送っているのはトルコ政府だが、やはり欧米の意向に反しての、セラジ政府支援には、無理があったのであろう。

 エルドアン大統領はこれまでの姿勢から、平和路線を打ち出し『リビア問題は話し合いによって、解決されるべきだ。」と語っている。一説によれば、トルコは既に、リビア問題での主導権を、握ったことでこうした立場を、打ち出したのだともいわれている。

 しかし、あまりにも多くの国々がリビア問題に関与し、武器を送り込み、戦闘への支援も行っている。しかも、セラジ政府はムスリム同胞団との、緊密な関係があり、セラジ政府を勝利に導き主、導権を取らせるようなことは、エジプトもアラブ首長国連邦も、サウジアラビアも賛成すまい。

 そして、アメリカやロシア、フランス、加えてイタリアも、リビアでの権益を逃すつもりはなかろう。リビア問題は既に、リビア人の手を離れたことだけは、明らかなようだ。