『イランのデモは何処まで拡大するか』

2020年1月13日

 イランの各地でデモが起り始めている。これはイラン政府が過失だと言っているが、ウクライナの旅客機を撃墜したことに対する、抗議デモだ。そのデモは首都テヘランでも起っており、場合によっては、全国規模の大きなものに、なりそうな気配がある。

 デモ参加者は当然のことながら、イラン政府がウクライナ機を、撃墜したことに抗議いているが、その抗議のシュプレヒコールのかなには、気がかりなものが幾つかある。イランの最高権威者である、ハメネイ師の辞任を要求するものもあるのだ。彼らは『ハメネイは責任を取って辞任しろ。』と叫んでいるということだ。

 加えて、先日アメリカによって暗殺された、イランの英雄スレイマーニ将軍を、非難する声も上がっている、ということのようだ。このデモ参加者は、テヘランでは1000人と言われたり、400人といわれたりで、正確な数字は分かっていない。

 ウクライナ機の撃墜が、何でこんなにまで、イラン国民を熱くさせているのであろうか。多分に、それはイラン西部で起り、全国規模にまで拡大した、ガソリン値上げ反対デモの、延長線上にあるからであろう。

 そのガソリン値上反対デモは、スレイマーニ将軍の死で、立ち消えになっていたのであろうが、やはり国民の不満は残っていた。イランでは公共交通網が、発達していないため、国民の移動はもっぱら自家用車、ということになる。従ってガソリンの値上は、直接的に各家庭の台所事情に、影響を及ぼすのだ。

 さて、今回のウクライナ機撃墜事件に対する非難デモは、何時の間にか、体制非難デモに変わりつつあるのだが、トランプ大統領は大喜びで、デモ参加者を激励しており、『我々は貴方たちの行動を見守っている。』とコメントしている。

 もし、このウクライナ機撃墜事件が、イランのハメネイ体制に対する、本格的な非難になり、それが拡大していけば、アメリカにとってはこれに勝る、好都合な話はあるまい。アメリカは何とか、イランのイスラム体制を崩したい、と考えているからだ。

 イランがイスラム体制から解放されれば、アメリカの企業はどんどんイランに進出し、イランの石油資源を抑えることが、出来るからだ。そうしたこともあり、旧パーレビ体制の残党を、アメリカはいまだに国内に、温存しているのだ。

 さて、今後どうなるかということを予測してみたい。デモ隊はスレイマーニ将軍も罵倒しているということだが、(もちろん一部のデモ参加者であろう)これは今後のイラン国民の多くの支持を得るには、不都合なことであろう。

デモ参加者の一部は、アメリカが喜ぶことをして、支持を取り付けよう、と考えているのであろうが、スレイマーニ将軍はシャヒード(イスラムのために死んだ人)なのだ。もちろん、イラン政府はこのことを取り上げ、デモ参加者のイメージを、悪くすることを画策することが予測される。

しかし、国民の不満が溜まっている、イランでのことであり、情況がどう展開するかは分からない。トランプ大統領の運気が強いか、ハメネイ師の運気が強いか、国民の不満の程度はどうかなど、多くの要素が、今後の展開を決めそうだ。