『今年はイランとリビアがメイン』

2020年1月 6日

 ことしのメイン・ニュースは、イランとリビアのようだ。イランは述べるまでもなく、大英雄スレイマーニ将軍が、アメリカによって、暗殺されたことによって始まろう。これはイラン国内ばかりではなく、アラブ世界全域に大きなショックと悲しみを、もたらしたと思う。

 スレイマーニ将軍はレバノンやイエメン、イラク、シリアの多くの反米勢力、反体制勢力を、支援指導してきていた。いわばイランの対外政策の、中心人物だったのだ。そのためスレイマーニ将軍の活躍で、イランは中東世界にイランのシーア派の弧を描くことが出来たのだ。

 このため、イランはもとより、アラブ世界の各地で、アメリカに対する、報復攻撃が叫ばれ、彼らはこぞって『アメリカに死を』と叫んでいる。レバノンのヘズブラの代表者であるナスラッラー師は『アメリカは新しい形の戦争を始めた。」と警告すると同時に、アメリカは中東から追い出されることになろう、と語っている。

 実際に、アメリカ軍が駐留するイラクでは、アブドルマハデイ首相が議会の意向を受け、アメリカは出て行け、と言い出している。これがどこまで進むかによっては、他のアラブの国々でも、同じような動きが起ころう。

 スレイマーニ将軍暗殺事件は、始まったばかりであり、これから大きな動きが、起こって行こう。そのなかには、イランとアメリカとの、軍事衝突も含まれていよう。

 もう一つの大きな懸念は、リビア情勢の今後の動向だ。トルコがリビアの西側政府、セラジ首相と交わした領海合意と、それに続く軍事協力合意は、具体的にはトルコが軍隊を、リビアに派遣するというものであり、既に先遣隊ともいえる、シリアのミリシア部隊が、トリポリに到着している。この後には、トルコ軍も派兵されるであろう。

 リビア国内のセラジ派を、トルコ軍が本格的に強化する前に、ハフタル将軍側はトリポリを、陥落させる方針なのであろう。ここに来て、ハフタル軍が相当強硬な作戦に転じている。その一つは、民間住宅街が空爆砲撃され、トリポリの軍の学校も空爆され、多くの死傷者が出ている。軍人は30人が死亡、負傷者は33人と報告されている。

 こうなるとセラジ首相は、必死でトルコの軍事支援を、要請するであろう。そうなればトルコは、派兵せざるを得なくなり、正面からハフタル軍と、衝突することになろう。

 一部にはロシアとトルコが裏で話し合い、リビアの緊張を緩和させるという、期待の意見もあるが、そううまくいくだろうか。リビアのこの戦いには世界の多くの国々が関係しており、ロシアとトルコだけの話し合いで、決着がつくというものではあるまい。