:トルコ
トルコのエルドアン大統領は、どうやらここに来て下り坂を、降り始めているような気がする。彼が始めたシリアへの軍事介入は、さしたる成果も挙げること無く、ただ、戦費がかさんでいるだけではないのか。
その上にリビアに手を出したのだから、ますます費用はかさむことになろう。どうやらリビアについては、エルドアン大統領の期待とは違う方向に、動き出しているようだ。加えて、国内的には野党の市長である、イスタンブールとアンカラの市長が、次第にエルドアン大統領に対して、挑戦的な立場を取り始めている。
それがもっと明確な形で表面化してくるのは、来年であろうと思われる。インフレ、失業、対外債務と、いずれの数値もよくないのだから、国民の不満は、相当膨れ上がっているものと思われる。それが何時暴発するかであろう。
:リビア
リビアの内戦は12
月末になり、ほぼ先が見えてきたような気がする。西と東に分かれて戦っていたのだが、戦場はもっぱら、西の首都トリポリ近郊だった。そのことは単純に考えて、東のハフタル将軍側が優位に、戦闘を展開しているということだ。
その東側リビア政府には、サウジアラビア、アラ首長国連邦、エジプトが支援を送っているが、それ以外にも、ロシアやアメリカもどうやら、ハフタル将軍支持のようだ。これでは西側政府は、厳しいものとなろう。
西側政府を支援しているのは、トルコとカタールそして、イタリアとフランスのようだが、フランスは狡賢い、西支持に回ったり、東支持に回っているのではないか。そうしたなかで、音無しの構えを取っているのはイギリスだ。
イギリスはリビアがイドリス王の時代、東部を支配していただけに、関心が無いわけはなかろう。イギリスは最終的な段階で、調停役に回り、しかるべき利益を、得るのかもしれない。アメリカは喜んでイギリスを迎え、ロシアのリビアへの関与を、弱めようとするだろう。
:エジプト
エジプトはリビア問題が、複雑化してくる段階で、同国の軍事力と経験が、ものを言いそうだ。リビアに隣接しており、大軍を抱えているエジプトは、何時でも10
万人単位の派兵が、可能であろう。
そのエジプト軍のリビア派兵で、費用を負担するのはサウジアラビアとアラブ首長国連邦、ということになろう。両国もエジプト同様に、ムスリム同胞団を敵視しており、もし、リビアで西側のセラジ首相が、勝利するようなことになれば、それはリビアがムスリム同胞団の、基地となるため、両国は不安定化しよう。少なくとも相当の不安を、抱え込むことになろう。
:イラン
イランでは西イランのフゼスタン地方で、起こったデモが全国に拡大し、首都テヘランまでもが、危険な状況に追い込まれた。不安を抱いたハメネイ師は、強硬対応を指示し、
1500人の国民が、治安部隊によって、殺されることとなった。この1500人という数は、政府発表であり実質は、2000人を超えているかもしれない。
結果はイラン国内の鎮静化が、実現したということだ。だが、それは一応であって、長期間ということではない。新年が明けて一定の時間が経過すれ、再度デモは起こる可能性が、高いだろう。それはこの国の経済数値が、悪いからだ。失業、インフレ、政府要人の汚職と、枚挙にいとまがない。
2020年の中東諸国の状況は、2019
年に比べれば、落ち着くのかもしれないが、薄氷を踏むようなものではないのか。各国それぞれが時限爆弾を、抱えているのだから。我々は注意して状況を、分析しなければならない、ということだ。