『ハフタル殺人罪で裁判に』

2019年12月24日

  リビアの東政府を代表する、ハフタル将軍がいまアメリカで、裁判にかけられている。これはリビア人の家族が、息子をハフタルに殺害された、という件が持ち上がったからだ。

 

この結果、弁護士はこの遺族に対して、ハフタル将軍は1.25億ドルを、支払わなければならない、としている。

 

 弁護士の調査段階では、ハフタル将軍はその場に、顔を出さなかった。ハフタル将軍は彼の持つ数百万ドルの金を、各地に分散して隠匿している、と言われている。何人かの親しい人物に託してもいる、ということだ。

 

 ハフタル将軍には二人の子息がいるが、彼らはアメリカに住んでいる。当然、彼らもハフタル資金の隠匿に、関わっていよう。

 

 ハフタル将軍はカダフィ時代に、アメリカに亡命し、バージニアに20年ほど、居住しているが、その当時、彼はCIAに協力していた、と言われている。彼はリビア人民救済戦線といった名前の、反カダフィ組織を立ち上げていたが、実際には何の活動も行っていなかった。

 

言わば、名目だけの組織であり、それを理由にアメリカは、ハフタル将軍に金を出していた、ということであろう。その後、リビアでアラブの春革命が始まると、彼は急遽帰国し、反カダフィ活動に、参加している。

 

 いまの段階では、リビアは二分され、西側の政府はセラジ首相がトップに位置し、東側はハフタル将軍が代表しているが、それぞれにスポンサーというか、彼らを支援する後援者がいる。セラジ首相の場合は、イタリア、トルコ、カタールが支援しており、ハフタル将軍側はエジプト、アラブ首長国連邦、フランス、ロシア等が支援している。

 

 ここに来て、ハフタル将軍の戦争犯罪が、問題視されるようになってきたのは、各国の利害が直接的に絡み合い、その一手段として裁判が、持ち上がったのであろう。戦争では民間人の死者が、出るのは普通であり、いちいちそれを裁判で、争うということは、何やら不思議な感じがする。

 

 この裁判問題は、裁判で勝訴するとかしないとかではなく、ハフタル将軍への精神的プレッシャーを、考えてのことではないか。そうなれば、ハフタル将軍は戦争よりも、自分の保身に、神経を使うからだ。だが、それほどハフタル将軍がそれ程やわだとは、思えないが。