『エルドアン大統領ハフタル将軍の戦争なるか』

2019年12月23日

 エルドアン大統領のリビア西側政府、セラジ首相支援をめぐり、東側の政府ハフタル将軍と、武力衝突する公算が、高くなってきている。ハフタル将軍側は既に、リビア東部デルナ沖を航行中のトルコの貨物船を、拿捕している。

 これに対し、エルドアン大統領は激高し、あらゆる報復をする、と息巻いている。こうなると、武力衝突しかあるまい。だがトルコには、勝算はあるのであろうか。トルコ側はハフタル将軍側を攻撃するとなれば、航空機を使うか艦船を使うしかあるまい。

 海路と空路の制圧無くしては、いかな屈強のトルコ軍と言えども、リビアに上陸することは出来まい。従って、今回のハフタル軍側による、トルコ貨物船の拿捕は、その前哨戦とも言えるものなのだ。

 トルコは空中給油機を持っているので、リビアまでの空軍機による、航行は可能であり、攻撃も可能だろうとみられているが、船舶はどうであろうか。大型の航空母艦など、トルコ海軍は所有していない模様だ。

 そうなると海軍での、乗り入れは危険過ぎよう。しかし、航空機による兵員や武器の輸送は、かなり限界があろう。先日、デルナ沖で拿捕された貨物船には、武器などが積まれてあったようだ、と言われている。

 もし、トルコがしかるべき量の武器を、リビアに搬入でき、戦闘が始まれば、熾烈を極めよう。死んでも進軍することで評判のトルコ軍、しかも、相手は元オスマン帝国領土となれば、メンツもかかっていよう。

 リビア側もやはり、ここ一番の勝負、負ければどちらかが、リビアから逃亡するか、死ぬしかあるまい。そこで、どこの国がリビア問題にかかわっているか、ということを考えなければなるまい。リビアは石油産出国なので、各国が強い関心を示しており、関与している。

 例えば、西側政府のセラジ首相側は、フランスやイタリアがバックに付いている、と言われているし、多分カタールもトルコと合わせて、支援していよう。他方、東側の政府ハフタル将軍側には、隣国のエジプト、アラブ首長国連邦、サウジアラビアが付いており、裏にはロシアとアメリカがいる、と言われている。

 アメリカにしてみれば、この際トルコとハフタル軍が、派手に戦闘を展開し、リビアのあらゆる施設が破壊されれば、再建の仕事が手に入る、と言えよう。だが、それをロシアが黙っているとは思えない、結果的に、ロシアとアメリカとの間で、秘密交渉が行われ、最終的には、ロシアがこの問題に、決着をつける、と多くの専門家が見ている。

 そう筋書き通りに進めば問題ないのだが、やはり血を見る必要があるような気がする。それがエルドアン体制にとって、極めて危険なのではないのか。トルコはいまシリアと戦争しており、国内のクルドPKKと戦っており、そのうえリビアでも戦争、ということになれば、相当無理な話ではないのか。トルコ経済は大分ダメージを受けよう。