イラン海軍がイエメンのアデン湾地域に、64隻の戦闘艦を派遣した。この数は冗談では済まされまい。これだけの艦船を派遣したということは、イエメン戦争に直接参画することを、意味してはいないのか。
イラン政府はこの戦闘艦を、アデン湾地域に派遣するのは、あくまでもイランやその他の国の、商船やタンカーを海賊から守るためだ、と説明している。確かに紅海地域はイランの各種の、船舶が通過する場所ではある。
紅海からスエズ運河まで通じる、この海上ルートは、イランにとっても世界にとっても、安全な船舶の航行にとって、重要なことは分かる。イラン政府は戦闘艦の派遣はあくまでも、イランやその他の国の、商船やタンカーの航行の、安全を守るためだ、と説明している。イランが考えておるのは、その安全航行を実現することにある、と説明している。
紅海の出口のバーブルマンデブ海峡付近では、確かにイランの艦船が、商船などを海賊の攻撃から、守ってきている。だが、それをそのまま信じて、いいのであろうか。時期が時期だけに、この戦闘艦の多数の派遣の裏には、他の目的もあるのではないか、と思われる。
第一には、アデンは現在、サウジアラビア寄りのイエメン政府や、その政府と和平を進めているグループが、拠点にしている、ということだ。従って、イランにとって不都合が発生した場合には、イランは海上からイエメン政府や、グループを攻撃することができるのではないか。
第2には、現在イエメンの元首都、サナアを拠点とするイラン寄りの、ホウシ・グループに対する支援が、可能だということだ。戦闘艦にドローンを搭載し、ホウシ・グループ側に引き渡すことも、その他の武器を提供することも、可能であろう。しかも、戦闘艦には運搬船も随伴していよう。
こうなると、今回のイランのアデン湾地域に対する、戦闘艦大量派遣は、サウジアラビアが神経を尖らせて、見ていることであろう。サウジアラビアはイランの支援する、ホウシ・グループによって、大分攻撃を受け、被害を受けているからだ。
現段階では確証は無いが、今後サウジアラビアがどう動くかに、注目する必要がありそうだ。イランにとっては、同国に敵対するアメリカにとって、サウジアラビアの安定は、死活問題だ。イラン政府にはそのサウジアラビアを、追い込むつもりがあることは、間違いなかろう。あるいは、イランはサウジアラビアを追い込むことにより、サウジアラビアのイランに対する、敵対的な立場変更させようと、思っているのかもしれない。
サウジアラビアと同盟関係にある、アラブ首長国連邦はイランに対する立ち位置を、変え始めている。サウジアラビアもイランと関係のいい、カタールで開催される、ガルフ・カップに参加する意向だ。何かが変化し始めているようだ。