トルコがやっと停戦に向かう、気配が見えて来た。何のことは無い、トルコのメンツを守るような言辞を、アメリカやロシアが、使い始めているからであろう。アメリカはペンス、ポンペオ両氏をトルコに送り込んだが、エルドアン大統領は会わない、と言ってのけた。
加えて、トランプ大統領からの親書は読んだあと、ごみ箱に捨てたというのだ。これでエルドアン大統領の強気は、アメリカに十分に、伝わったことであろうし、トルコ国内では、彼の強気の姿勢が、十分に国民の間に伝わり、留飲を下げさせたことであろう。
他方、ロシアはと言えば、シリアとトルコの折衷案のような提案をし、トルコのめんつを保っている。これでトルコはシリアとの武力衝突を、取りやめることが出来たわけだ。もちろん、ロシアの軍事介入を始めから、織り込んでいたトルコは、シリア軍がマンビジュを抑えても、それがテロの掃討に繋がるのなら、問題ないと言っている。
エルドアン大統領は、一旦は断ったペンスやポンペオとの面談を、ペンスに限って許可している。そのときに、細かいアメリカとの取引を、したのであろう。バカを見たのはポンペオということになろう。彼は三枚目役者を、演じさせられたということだ。それでも、それは必要なことだったのかもしれない。
アメリカが弱気にならざるを得ない、幾つものことがあったのは事実だ。トランプ大統領の選挙に向けた、メンツの維持、そして、大きな問題は、トルコのインジルリク空軍基地に、アメリカ軍が50発とも60発ともいわれる、核弾頭を置き去りに、していたことだ。
その核弾頭は旧式だった、とは言われてはいるが、それがトルコの手に渡ったのでは、アメリカはヨーロッパ諸国に対しても、中東諸国に対しても、立場を失ったことであろう。これらの国々に危険を及ぼす、可能性があったからだ。
ロシアについて言えば、ロシア空軍はトルコ空軍とは戦闘を展開したくなかったろうし、それはトルコ側も同じだ。以前、トルコ軍機がロシア軍機を、撃墜するということが、起こっているが、双方ともに、その二の舞は望むまい。
トルコとロシアはいま、S400の取引以来、極め良好な関係にある。その関係を壊したくないのは、ロシアもトルコも同じであろう。トルコにしてみれば、ロシアとの良好な関係を誇示しながら、アメリカとの交渉を、有利に進めたい、ということは明らかだ。
これだけの、何枚ものカードをめくりながら、ロシアもトルコも、アメリカも交渉しているということだ。それに比べると、日本と韓国との間で、起っている険悪な関係は、案外、単純なゲームなのかもしれない。
ただ、日本の政治家や官僚は、何処まで悪者になれるか、ということだ。国際関係はだましあい、裏切りあい、なんてことは当然のことなのだから。善良と正直を絵に描いたような人たちに、国際的交渉は、可能なのだろうか、と不安になる。